助けを求める力~自分一人で頑張りすぎないことも、大切な自立の一つ~

「分からないことがあっても、なかなか質問できない」

「困っているのに、周りに助けを求められない」

「失敗したことを知られたくなくて、つい黙ってしまう」

このような子どもの姿を見たことはありませんか?

中学生・高校生になると、自分でできることが増える一方で、周囲の目を気にしたり、失敗を恥ずかしいと感じたりすることも増えていきます。友人関係や学校生活、将来の進路など、悩みや不安を抱える場面も少なくありません。

特に発達障害のある子どもの中には、困っていても自分から相談できず、一人で抱え込んでしまう子どももいます。何に困っているのかを整理することが難しかったり、相手にどう伝えればよいのか分からなかったり、質問すること自体に強い不安を感じたりする場合もあります。

しかし、将来、社会に出て働くことを考えたとき、身につけておきたい大切な力の一つが「助けを求める力」です。

自立とは、何でも一人でできるようになることだけではありません。自分が困っていることに気づき、必要なときに周囲の人へ相談し、助けを借りながら解決していくことも、自立するための大切な力なのです。

目次

なぜ「助けて」と言えないのか?

子どもが困っているのに相談できない理由は、一つではありません。

例えば、「こんなことも分からないの?」と思われるのが怖い子どもがいます。以前、質問したときに注意された経験から、また怒られるのではないかと不安になる子どももいます。

また、自分が何に困っているのかをうまく整理できず、どう説明すればよいのか分からない場合もあります。困っていることは感じていても、それを言葉にすることが難しかったり、相手が忙しそうに見えて声をかけるタイミングをつかめなかったりすることもあります。

発達特性によっては、状況を整理すること、気持ちを言葉にすること、相手の反応を予測することなどに難しさがあり、相談するまでに時間がかかる場合もあります。

さらに、周囲から「自分で考えなさい」「何度も聞かないで」と言われた経験が重なると、質問すること自体を避けるようになることも考えられます。

周囲から見ると「分からなければ聞けばいいのに」と思うかもしれません。しかし、本人にとっては、質問すること自体に大きな勇気が必要な場合があるのです。

だからこそ、相談できない姿を見て、すぐに「自分から行動できない」「積極性がない」と決めつけないことが大切です。

まずは、なぜ相談できないのか、どの段階で難しさを感じているのかを考えてみましょう。質問の仕方が分からないのか、失敗を知られるのが怖いのか、それとも困っていること自体に気づきにくいのか。背景によって、必要な支援は変わってきます。

助けを求める力は、いくつかの段階からできている

助けを求める力は、単に「分からないことを質問する」という一つの行動だけではありません。実際には、いくつかの段階を経て成り立っています。

① 自分が困っていることに気づく

まずは、「分からない」「うまくできない」「どうしたらよいか迷っている」と、自分の状況に気づくことが出発点になります。

② 何に困っているのかを整理する

次に、どこまでできていて、どこから分からなくなったのか、何が難しいのかを整理します。最初から正確に説明できなくても構いません。

③ 周囲の人に伝える

困っていることを、言葉や身振り、メモ、質問カードなど、自分に合った方法で相手に伝えます。

④ 助言を受け取り、次の行動につなげる

助言や説明を受けたら、必要に応じて確認しながら行動します。分からないことが残っていれば、もう一度質問してもよいのです。

これらの段階を、最初から一人でできる必要はありません。大人と一緒に状況を整理したり、質問の言葉を考えたりする経験を重ねることで、少しずつ自分でできる部分を増やしていきます。

大切なのは、すぐに一人で相談できることだけを目標にするのではなく、本人の現在の力に合わせて、できる段階から練習していくことです。

働くためにも必要な「相談する力」

将来、社会に出て働くようになると、分からないことや困ることは必ず出てきます。

仕事の手順が分からないとき、指示の意味を理解できないとき、予定どおりに作業が進まないとき。そんな場面で大切になるのが、周囲に相談する力です。

例えば、パソコンで入力作業をしているとき、操作方法が分からなくなったとします。そのまま適当に進めてしまえば、間違いが増えたり、後から大きな修正が必要になったりするかもしれません。

一方で、「ここまではできましたが、この先が分かりません」と伝えることができれば、必要な説明を受け、作業を続けることができます。

また、仕事の期限に間に合わない可能性があるときや、体調が悪くて作業を続けることが難しいときにも、早めに相談することが重要です。困難が大きくなってから伝えるよりも、早い段階で状況を共有することで、周囲も対応しやすくなります。

仕事では、すべてを一人で解決することよりも、分からないことを確認し、ミスを防ぎながら取り組む姿勢が大切です。

「分からない」と伝えることは、能力がないことの証明ではありません。正しく仕事を進め、責任を持って取り組むための大切な行動なのです。

さらに、社会で働くうえでは、自分に必要な配慮やサポートを伝える力も役立ちます。例えば、「口頭だけだと忘れてしまうので、手順をメモでもらえると助かります」「一度に説明されると混乱するので、一つずつ教えてください」と伝えられれば、自分に合った方法で仕事に取り組みやすくなります。

自分の苦手なことを理解し、必要な助けを具体的に伝えられることも、長く安定して働くための大切な力です。

放課後等デイサービスでできること

では、助けを求める力は、どのように育てていけばよいのでしょうか。

放課後等デイサービスでは、日々の活動そのものが練習の機会になります。特別なプログラムを用意するだけでなく、作業トレーニングや集団活動、日常のやり取りの中で、相談する経験を積み重ねていくことができます。

例えば、作業トレーニングで手順が分からなくなったとき、すぐに職員が答えを教えるのではなく、本人が困っていることに気づき、質問できるように支援します。

「どこまで分かったかな?」

「何が分からないか、一緒に整理してみよう」

「職員にどう聞けば伝わると思う?」

このような声かけを通して、困った状況を整理し、自分の言葉で伝える経験を積み重ねていきます。

最初から自分で質問することが難しい場合は、「ここを教えてください」「もう一度お願いします」「次に何をすればいいですか?」といった言葉を職員と一緒に練習することも有効です。

言葉で伝えることが難しい子どもには、分からない場所を指さす、質問カードを提示する、メモに書いて渡すなど、本人が使いやすい方法を取り入れます。助けを求める方法は、必ずしも言葉だけである必要はありません。

また、職員があえて少し待ち、本人が考えたり相談したりする時間を確保することも大切です。ただし、困っている様子が強い場合や、不安が高まっている場合には、無理に自分から質問することを求めず、必要な支援を行います。

自分で考える機会をつくることと、困っている子どもを放置しないこと。その両方を大切にする必要があります。

相談できたときには、「自分から聞くことができたね」「早めに確認できたから、間違えずに進められたね」と、具体的に認めることも重要です。

たとえ職員が質問の言葉を一緒に考えた場合でも、本人が相談する行動に参加できたことを肯定的に受け止めます。最初から一人でできることだけを評価するのではなく、助けを求める経験そのものを大切にするのです。

こうした経験を繰り返すことで、子どもたちは少しずつ「困ったら相談してもいい」「分からないことを聞いても大丈夫」という安心感を持てるようになります。

家庭でもできる小さな取り組み

助けを求める力は、放課後等デイサービスだけで身につけるものではありません。家庭での関わりも大切です。

例えば、子どもが困っている様子を見たとき、すぐに大人が解決してしまうのではなく、「何に困っているの?」「どんな手伝いがあればできそう?」と聞いてみましょう。

本人が自分の状況を整理し、必要な助けを考える機会になります。

ただし、質問されてもすぐに答えられない子どももいます。その場合は、「やり方が分からない?」「どこから始めるか迷っている?」など、選択肢を示して一緒に考える方法もあります。

また、子どもが相談してきたときには、まず話を聞くことを意識してみてください。

相談した結果、すぐに注意されたり、否定されたりする経験が続くと、子どもは「相談しない方がいい」と感じてしまうことがあります。

もちろん、間違った行動について伝える必要がある場面もあります。しかし、相談してくれたこと自体を受け止める姿勢が、次の相談につながります。

例えば、失敗を隠さずに話してくれたときには、まず「話してくれてありがとう」と伝えます。そのうえで、何が起きたのかを一緒に整理し、次にどうすればよいかを考えていきます。

「話してくれてありがとう」

「一緒に考えてみよう」

「困ったときは、早めに教えてくれると助かるよ」

そんな言葉が、子どもにとって安心して助けを求めるための土台になります。

家庭でも、分からないことを質問したり、失敗したことを正直に話したり、誰かに手伝ってもらったりする姿を大人が見せることは、よい手本になります。

大人も一人ですべてを解決しているわけではないことを伝えることで、子どもは「人に頼ることは特別なことではない」と感じやすくなるでしょう。

おわりに ~一人で頑張ることだけが自立ではない~

私たちは子どもたちに、できることを増やし、自分の力で生活できるようになってほしいと願います。

しかし、自立を目指すあまり、「自分のことは自分でやらなければならない」という気持ちが強くなりすぎると、困っていても誰にも相談できなくなってしまうことがあります。

大切なのは、一人でできることを増やすだけでなく、自分だけでは難しいときに、周囲の力を借りられるようになることです。

社会に出れば、誰にでも苦手なことや分からないことがあります。必要な相手に相談し、助言を受けながら前に進めることは、自分の力を発揮するための大切な方法です。

放課後等デイサービスでの何気ない質問や相談も、将来につながる大切な経験です。職員がすぐに答えを教えるのではなく、本人が考え、伝え、助けを受けながら解決する経験を積み重ねることで、少しずつ自分に合った相談の仕方を身につけていくことができます。

「分からない」と言えること。

「手伝ってほしい」と伝えられること。

そして、困ったときに一人で抱え込まないこと。

助けを求める力は、甘えではなく、自分らしく社会で生きていくための大切な力です。

子どもたちが安心して周囲を頼り、自分の力を発揮できるように、日々の小さなやり取りを大切にしていきたいですね。

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