お子さまが小学校高学年や中学生になると、「学校を卒業したあとはどうなるのだろう」「どんな場所で働くことになるのかな」と、将来の生活や進路について考える機会が増えてくるのではないでしょうか。
障がいのあるお子さまの卒業後の進路には、一般企業への就職をはじめ、就労移行支援、就労継続支援A型・B型など、さまざまな選択肢があります。
一方で、保護者の方からは、
「うちの子には、どんな働き方が合っているのだろう?」
「本人の得意なことや苦手なことを、どうやって見つければいいの?」
「卒業後の進路は、いつ頃から考え始めればいいの?」
といった不安や疑問の声も聞かれます。
進路を考えるうえで大切なのは、早い段階で行き先を決めることではありません。お子さま自身の希望や得意なこと、必要なサポートなどを知り、さまざまな選択肢の中から、自分に合った道を考えていくことです。
こうした進路選択を支えるため、令和7年(2025年)10月に新しい障害福祉サービス「就労選択支援」が始まりました。
今回は、この制度がどのようなものなのか、これまでの仕組みと何が違うのか、そして中高生のお子さまを持つご家庭にとって、どのような意味があるのかを分かりやすくご紹介します。
1.就労選択支援って、どんな制度?
就労選択支援を簡単に説明すると、本人の希望や得意なこと、働くうえで必要な配慮などを整理し、自分に合った働き方や就労支援サービスを選べるようにサポートする制度です。
進路を決める際には、実際の作業を体験したり、支援員と一緒に自分の得意・不得意を整理したりすることが役立ちます。
就労選択支援では、こうした「就労アセスメント」の手法を活用し、本人の希望や適性、必要な支援などを把握していきます。
ここでいうアセスメントとは、単に作業の速さや正確さを測ることではありません。
例えば、
- どのような作業に興味を持てるか
- 一人で集中する作業と、誰かと協力する作業のどちらが取り組みやすいか
- 口頭での説明と、見本や写真を使った説明のどちらが分かりやすいか
- どのような環境であれば安心して力を発揮できるか
- 働くために、どのような配慮やサポートが必要か
といったことを、本人の様子や意向を踏まえながら整理していきます。
大切なのは、できること・できないことを判定するだけではなく、本人が力を発揮しやすい環境や、働くために必要な工夫を見つけることです。
2.具体的には、どんなことをするの?
就労選択支援では、本人との面談や作業体験、関係機関との連携などを通して、これからの働き方を考えていきます。
主な流れを見てみましょう。
① 面談を通して、本人の希望を整理する
まずは、本人がどのようなことに興味を持っているのか、将来どのような生活を送りたいのかなどを確認します。
例えば、
「パソコンを使う仕事に興味がある」
「体を動かすことが好き」
「人と話す仕事より、黙々と作業するほうが好き」
といった気持ちも、進路を考える大切な手がかりになります。
まだ将来の希望がはっきりしていなくても、問題ありません。
今の段階で分かっていることから、少しずつ整理していきます。
② 作業などを体験し、自分の特徴を知る
実際の仕事をイメージできるような作業に取り組みながら、本人の得意なことや、取り組みやすい条件などを確認します。
例えば、次のような体験が考えられます。
- パソコンで文字や数字を入力する
- 商品を仕分けたり、決められた数だけ袋に入れたりする
- 部品を組み立てる
- 道具や作業場所を整理する
- 周囲の人と協力して作業を進める
このとき、作業の結果だけでなく、取り組む過程にも目を向けます。
例えば、作業に時間がかかっていても、手順書があれば正確に進められるかもしれません。
口頭での指示は難しくても、見本を見せるとスムーズに取り組めるかもしれません。
こうした気づきは、将来の職場選びだけでなく、働き始めてから必要となる配慮を考えるうえでも役立ちます。
③ 本人や家族、支援者などで情報を共有する
作業体験などで分かったことをもとに、本人の希望や適性、必要な支援について整理します。
必要に応じて、家族や学校、相談支援事業所、就労支援機関などの関係者と情報を共有し、今後の方向性を検討します。
ここでは、大人だけで進路を決めるのではなく、本人が理解しやすい方法で情報を伝え、本人の意向を確認することが大切です。
④ 整理した情報を、進路選択につなげる
これまでに確認した本人の希望や特徴、必要な配慮などを踏まえて、どのような進路が考えられるのかを検討します。
就労選択支援は、特定の進路に誘導するための制度ではありません。
本人の希望や状況に応じて、一般企業への就職や就労移行支援、就労継続支援A型・B型など、さまざまな選択肢を検討するための支援です。
アセスメントの結果だけで進路が自動的に決まるわけではなく、本人の意向を大切にしながら、その後の具体的な進路選択につなげていきます。
3.就労選択支援が始まると、何が変わるの?
これまでも、学校での進路指導や職場実習、就労支援機関によるアセスメントなどを通じて、卒業後の進路を考える取り組みは行われてきました。
就労選択支援は、こうした取り組みをなくすものではなく、本人がより適切な選択をできるよう、就労に関する評価や意向の整理、関係機関との連携を支える新たなサービスです。
特に知っておきたいのは、就労選択支援が、すべての子どもに一律に義務づけられるものではないという点です。
令和8年(2026年)10月現在、制度の利用については、希望するサービスや本人の状況などによって取り扱いが異なります。
例えば、新たに就労継続支援B型の利用を希望する場合は、原則として利用申請前に就労選択支援を利用する仕組みになっています。ただし、対象者の状況などによる例外もあります。
また、新たに就労継続支援A型を利用する場合や、就労移行支援の標準利用期間を超えて利用する場合については、令和9年(2027年)4月以降、原則として就労選択支援を利用する仕組みが予定されています。
制度の対象や利用手続きは個々の状況によって異なるため、実際に進路を検討する際には、学校や相談支援事業所、市区町村の障がい福祉担当窓口などに確認することが大切です。
4.中高生のうちから、できる準備はある?
就労選択支援は、卒業後の進路を検討する段階だけでなく、特別支援学校などに在学する生徒が利用することも想定されています。
ただし、在学中であれば誰でも自由に利用できるというわけではなく、学校での実習や進路指導との調整、本人の状況などを踏まえて検討する必要があります。
では、中学生や高校生のうちから、ご家庭や日々の支援の中でできることは何でしょうか。
それは、すぐに職業を決めることではなく、自分の特徴を知り、さまざまな経験を通して「自分に合うこと」を少しずつ見つけていくことです。
例えば、
- 好きなこと、興味のあることを見つける
- 苦手なことや、困りやすい場面を知る
- 困ったときに、周囲の人へ助けを求める
- 説明を聞いたり、見本を見たりして、作業に取り組む
- 自分に合った休憩の取り方を知る
- お金の使い方や買い物、公共交通機関の利用など、生活に必要な経験を積む
こうした経験は、就職するためだけのものではありません。
自分らしい生活を送り、必要なときに周囲のサポートを受けながら、自分で選択していく力にもつながります。
進路について考えるときは、「何ができるか」だけでなく、「どんな生活を送りたいか」「どんな環境なら安心して過ごせるか」という視点も大切にしたいものです。
5.放課後等デイサービスとして、私たちができること
新しい制度によって進路選択を支える仕組みが広がる一方で、保護者の方の中には、
「うちの子の得意なことは何だろう?」
「将来、どんな仕事が向いているのだろう?」
「本人が自分の希望をうまく伝えられないとき、どう支えればいいのだろう?」
と感じている方もいらっしゃると思います。
だからこそ、日々の放課後等デイサービスでの経験が大切になります。
当事業所では、日常の活動やさまざまな体験を通して、将来の自立や進路選択につながる土台づくりを支援していきます。
自分の「得意・苦手」を知る
活動の中で、集中して取り組めること、興味を持ちやすいこと、難しさを感じることなどを一緒に確認します。
苦手なことを無理に克服させるのではなく、どのような工夫があれば取り組みやすくなるのかを考えていきます。
困ったときに、助けを求める練習をする
働くうえでは、すべてのことを一人でできる必要はありません。
分からないときに質問する、困ったときに「手伝ってください」と伝える、体調が悪いときに休みたいと申し出る。
こうした力は、安心して働き続けるためにも大切です。
日常生活に必要な力を育てる
買い物や金銭管理、公共の場でのマナー、移動時の安全確認など、日々の生活に関わる経験も大切にします。
一人でできることを増やすだけでなく、必要なときに周囲のサポートを受けながら行動できることも、自立につながる大切な力です。
小さな成功体験を積み重ねる
初めてのことに挑戦する、自分で選ぶ、最後まで取り組む、困ったときに相談する。
そうした一つひとつの経験を通して、「自分にもできることがある」「工夫すればできることが増える」という実感を育んでいきます。
そして、本人が自分の気持ちや希望を表現できるよう、日々の関わりの中で丁寧に支えていきたいと考えています。
おわりに ― 進路選択は、自分らしい未来を考えること
卒業後の進路を考えることは、保護者の方にとっても、お子さま本人にとっても、大きなテーマです。
将来のことを考えると、不安や迷いが生まれるのは自然なことです。
しかし、今すぐに進路を決める必要はありません。
日々の生活や活動の中で、好きなことや得意なことを見つけ、さまざまな経験を積み重ねながら、少しずつ将来の選択肢を広げていけばよいのです。
就労選択支援は、本人の希望や適性、必要な配慮などを整理し、自分に合った働き方を考えるための制度です。
大切なのは、周囲の大人が進路を決めてしまうことではなく、本人が自分の可能性を知り、納得できる選択をしていけるように支えることです。
私たち放課後等デイサービスも、日々の活動を通して、お子さま一人ひとりの「できた」「やってみたい」「自分で選べた」という経験を大切にしていきます。
一人ひとりの歩みに合わせながら、将来の自立と、自分らしい生活につながる力を育んでいきましょう。



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