就労準備性ピラミッドって何?

発達障害や精神障害をもつ方の中には、「就労するためにどんな力が必要なのかよく分からない」という悩みをもっている方が少なくありません。この疑問に答えるのが「就労準備性ピラミッド」です。今回は就労に向けてとても大切な「就労準備性ピラミッド」についてお話しさせていただきます。

目次

★就労準備性ピラミッドとは?

就労準備性ピラミッドとは、障害の有無にかかわらず就労するために必要なスキルや資質を階層的に示したモデルです。土台に近い部分ほど、安定して長く働き続けるために重要だといわれています。下から積み上げていくことで、就労に向けての準備が整っていくのです。職業準備性ピラミッドは、「健康管理」「日常生活管理」「対人技能」「基本的労働習慣」「職業適性」という5つの段階に分かれています。(4段階のものもありますが、ここでは厚生労働省から出ている5段階で解説します。)それぞれの段階ごとにチェックしていくと、ついている力とこれからつけていくべき力がわかります。

★就労に必要な5つのスキルとは?

それでは、一番下の土台となる段階の「健康管理」から見ていきましょう。

  1. 健康管理

職業準備性ピラミッドのもっとも土台となる部分が「健康管理」です。
ここがしっかりしていないと、元気で働き続けることは難しいでしょう。
具体的には、
・不調時には周囲に伝えたり、休んだりできる
・睡眠リズムが一定で、定刻に起床・就寝ができる
・必要に応じて、通院や服薬ができる

ポイントは、「自己理解と健康管理ができているかどうか」ということです。自分の特性や過敏さについての理解ができていると、周囲の人に助けを求めやすくなり、職場で合理的配慮をお願いするのに役立ちます。心と体の調子が安定し、休まず出勤できるということは、それだけで大きな強みになります。

  1. 日常生活管理

次に、日常管理について解説します。
具体的には、
・ひげをそる、適切な衣服を着るなど身だしなみが整っている
・ある程度の金銭管理ができ、浪費や借金をしない
・規則正しい生活を送り、遅刻や欠勤をせずに仕事ができる

ポイントは、「規則正しく、自分を律して生活できるかどうか」ということになります。発達障害や精神障害を抱えている方によく見られるのが、睡眠障害や極端な夜型です。これが続くと、毎日決まった時刻に出勤することが難しくなってしまいます。また、金銭や書類、物の管理も社会人として大切なスキルです。

  1. 対人技能

職業準備性ピラミッドのちょうど真ん中に位置するのが、「対人技能」です。
具体的には、
・他者とかかわり、やりとりをすることができる
・感情をコントロールし、爆発せず過ごせる
・分からないことや不安なことは、質問・相談して解決しようとできる

ポイントは、「自分の感情をコントロールし、他者とコミュニケーションをとれるか」ということです。感情のコントロールに課題があると、注意されただけで怒りを抑えきれなくなったり、同僚とトラブルになってしまったりすることがあります。「コミュニケーション力を身につけるのは難しい」と考えがちですが、トレーニングによってコミュニケーションを改善することは可能です。

  1. 基本的労働習慣

職場で必要なルールやマナーに関係するのが、「基本的労働習慣」です。
具体的には、
・報告・連絡・相談ができる
・職場の規則を守ることができる
・TPOに合ったあいさつや返事ができ、身だしなみが整っている

ポイントは、「基本的なビジネスマナーが身についており、決められた一定の時間働くことができるか」ということです。

ビジネスマナーには、敬語や規則の遵守など、社会人として当たり前のことが含まれます。これらはどこの職場でも必要とされる力です。また、一定の時間集中して仕事に取り組むことも大切なスキルです。

  1. 職業適性

職業準備性ピラミッドの最上段に位置するのが、「職業適性」です。「就労に必要なスキル」というと、この部分をイメージする方が多いかもしれません。
具体的には、
・職務への適性がある
・正確性と処理スピードを両立できている
・職務遂行に必要な知識・技能をもっている

ポイントは、「それぞれの仕事に必要とされるスキルをもっているか」ということです。業務内容によって、要求されるスキルは異なります。たとえば事務職では、PCスキルや正確性、根気強さが必要とされます。それに対し、接客の現場では、笑顔で明るく人と接することが求められます。これらの「求められるスキル」を持っているかどうかが、この「職業適性」です。

まとめ

安定して働き続けるためには、職業準備性を身につけることが大事です。そうはいっても、人間誰しも、すべての力を完璧に身につけることは不可能です。どうしても苦手な部分に関しては、他の人に頼ったり、苦手であることを伝えて合理的配慮を求めたりなどの方法を使って、周囲のサポートも受けながら、職業準備性を高めていくことが大切です。

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