発達障害の診断基準と医療機関の選び方

発達障害とは、先天的な脳機能の違いによって、社会的なコミュニケーションや行動に特徴が現れる状態を指します。代表的な発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)などがあります。本コラムでは、発達障害の診断基準と、適切な医療機関の選び方について詳しく解説します。

目次

発達障害の診断基準とは?

発達障害の診断基準とは?

発達障害の診断には、国際的な診断基準が用いられます。主に使用されるのは、以下の2つの診断基準です。

1. DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版)

アメリカ精神医学会(APA)が作成したDSM-5は、発達障害の診断に広く用いられています。

自閉スペクトラム症(ASD)

・社会的コミュニケーションの困難(視線を合わせない、言葉のやりとりが苦手など)

・限定された興味や反復行動(特定の物への強いこだわり、同じ動作を繰り返すなど)

・乳幼児期から症状が見られる

・感覚過敏や鈍感など、感覚処理の違いがある場合も多い

・こだわりの強さやルーティンの変化への抵抗が日常生活に影響を与える

・他者との関係性の築き方に独自のスタイルがあり、集団生活で困難を感じることが多い

・言語発達の遅れが見られる場合もあり、適切な言葉の使い方に苦労することがある

・状況の変化に適応するのが難しく、特定の環境やルールに固執することがある

注意欠如・多動症(ADHD)

・注意が散漫で集中しにくい

・衝動的な行動が多い

・落ち着きがなく、じっとしていられない

・計画的に行動することが苦手で、忘れ物や遅刻が多い

・感情のコントロールが難しく、怒りっぽいことがある

・ルールを守るのが苦手で、集団行動の中でトラブルを起こしやすい

・長時間の作業が苦痛に感じるため、途中で作業を投げ出してしまうことがある

・興味のあることには強い集中力を発揮できるが、他の作業には関心を持ちにくい

学習障害(LD)

・読む、書く、計算する能力のうち特定の分野に困難を抱える

・全般的な知的発達には問題がないが、特定の学習領域で著しい困難を示す

・語彙の理解や音韻認識が弱く、文章の読解が困難な場合がある

・算数の概念を理解するのに時間がかかることが多い

・音読や筆記のスピードが遅く、授業についていくのが難しい

・学校のテストや宿題に対する不安が強く、学習意欲が低下しやすい

2. ICD-11(国際疾病分類 第11版)

WHO(世界保健機関)が策定するICD-11も、発達障害の診断に用いられます。DSM-5と類似していますが、用語や分類が異なる部分もあります。

ICD-11では、神経発達症群(Neurodevelopmental disorders)として分類される

DSM-5との違いとして、ASDのサブタイプ分類がなく、より広範な概念として扱われる

ADHDについても成人期の診断基準がより詳細に記載されている

発達障害の診断を受けるまでの流れ

発達障害の診断を受けるには、以下のようなステップを踏みます。

気になる症状を観察する

・乳幼児期から特定の行動やコミュニケーションの違いに気づくことが多い

・学校や家庭での困難が目立つ場合、早めの相談が重要

・成長とともに変化する特性を把握するため、日々の記録をつける

・友達との関係性や遊び方の違いを観察し、集団生活の適応状況を確認する

学校や専門機関で相談する

・幼稚園・保育園の先生、学校の特別支援教育コーディネーターに相談する

・発達支援センターや児童相談所でのアドバイスを受ける

・必要に応じて教育委員会や専門機関の評価を受ける

・教育現場での支援策や個別指導計画の作成を検討する

専門の医療機関を受診する

・小児科、児童精神科、発達外来などの医療機関で診察を受ける

・診断には複数回の受診が必要なことが多い

・家族とともに問診を受けることで、より正確な診断につながる

・知能検査や行動観察の結果を基に、適切な療育方針を立てる

・脳の発達や神経系の評価を行うために、MRIや脳波検査が実施されることもある

まとめ


発達障害の診断は、DSM-5やICD-11の基準に基づき行われます。診断を受けるためには、適切な医療機関を選び、早めに相談することが重要です。診断後は、療育や支援を活用し、本人が生きやすい環境を整えていくことが求められます。専門家や家族と連携しながら、長期的な視点でサポートを続けていきましょう。

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