発達障がいと分かった時 ~お子様との向き合い方~

お子さまの特性や診断を知ったとき、多くの保護者の方は、安心・不安・戸惑い・悲しみなど、さまざまな感情が一度に押し寄せてくる経験をされます。これは決して特別なことではなく、「障がい受容」と呼ばれる自然な心の動きの一部です。

ここでは、発達障がいと分かったときに保護者がたどりやすい心の流れを整理しながら、支援の現場でも大切にされている考え方を、分かりやすくまとめています。


目次

【障がい受容とは何か】

・障がい受容とは、お子さまの特性や診断を現実として理解し、「これからどう向き合っていくか」を少しずつ考えていく心の過程のことです。
・無理に受け入れようと努力するものではなく、時間の経過とともに気持ちが揺れ動きながら変化していく自然な流れです。
・受容までの時間には個人差があり、短期間で整理できる方もいれば、数年かけてゆっくり進む方もいます。
・どの段階にいるから良い・悪いということはなく、迷いや後戻りがあることもごく普通のことです。


【障がい受容の主な段階】

① ショック期
・診断や説明を受けた直後に起こりやすい時期です。
・「まさかうちの子が」「何が起きているのか分からない」と頭が真っ白になることがあります。
・情報を受け取る余裕が少なく、過剰な情報がかえって混乱を招くこともあります。

② 否認期
・「きっと違う」「成長の途中なだけでは」と感じ、現実を受け止めきれない状態です。
・診断そのものから距離を置きたくなることもあります。
・これは心を守るための自然な反応で、多くの保護者が経験します。

③ 混乱・怒り期
・「なぜうちの子が」「自分の育て方が悪かったのでは」と自分を責めてしまうことがあります。
・周囲の子どもと比べてしまい、将来への不安が強くなります。
・怒り・悲しみ・焦りなど、複数の感情が同時に湧き上がりやすい時期です。

④ 努力・取引期(頑張りすぎの時期)
・「自分がもっと頑張れば変えられるはず」という思いから、療育や練習に力を入れすぎてしまうことがあります。
・行動量が増える一方で、心身の疲れがたまりやすい時期でもあります。
・努力は大切ですが、保護者自身が疲弊しないことも同じくらい重要です。

⑤ 抑うつ期
・思うような成果が感じられず、落ち込みやすくなります。
・「このままで将来は大丈夫だろうか」と不安が強まることがあります。
・気力が低下し、気持ちが重く感じられることもあります。

⑥ 受容期
・障がいを「諦める」のではなく、「この子の特性を理解し、よりよい関わり方を探していこう」と考えられる状態です。
・「この子にはこの子のペースがある」と捉えられるようになります。
・困りごとを周囲と共有し、必要な支援を選択できるようになっていきます。

【受容は一直線ではありません】


・これらの段階は順番通りに進むものではなく、行ったり来たりすることがほとんどです。
・入園・入学・進級・思春期など、環境が変わるたびに気持ちが揺れ動くことがあります。
・成長に応じて「受け止め直し」が起こることは、ごく自然で大切なプロセスです。
・気持ちが揺れる自分を責める必要はありません。


【保護者の方に知っておいてほしいこと】

・同じ診断名であっても、成長の仕方や困りごとは一人ひとり異なります。
・「こう育てなければならない」という正解はありません。
・保護者自身の気持ちを大切にし、つらさや不安を誰かに話してもよいのです。
・周囲のサポートを得ることで、お子さまの成長も、保護者の心も安定しやすくなります。


【私たち支援者が大切にしていること】

・お子さまの「できないこと」だけでなく、「できていること」「伸びていること」を丁寧に見つけ、共有します。
・課題だけに目を向けず、その子の強みや可能性を一緒に探していきます。
・保護者の不安や悩みに寄り添い、必要な支援を共に考えます。
・ご家庭と協力しながら、無理のないペースでの成長を大切にします。


【最後に】

障がい受容は、保護者の愛情の深さや努力の度合いとは関係なく、誰にでも起こる心の動きです。揺れたり、立ち止まったり、時には戻ったりすることも決して珍しいことではありません。

私たちは、保護者の皆さまの気持ちを尊重しながら、お子さまがその子らしく成長していけるよう、共に歩んでいきたいと考えています。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次