放課後等デイサービスにおけるデジタルデトックスの善悪

放課後等デイサービスにおけるデジタルデトックスの善悪

―「取り上げる支援」から「使いこなす支援」へ―

近年、放課後等デイサービスの現場でも「デジタルデトックス」という言葉を耳にする機会が増えてきた。スマートフォン、タブレット、ゲーム機などのデジタル機器は、小学生から高校生に至るまで、すでに生活の一部となっている。遊びの道具であり、学習の補助であり、ときには安心感を得るための“居場所”のような存在でもある。

一方で、 「動画ばかり見ている」 「ゲームをやめられない」 「人との関わりが広がらない」 といった保護者の不安や、支援現場での課題感から、デジタル機器との距離感を見直す必要性が語られるようになった。

ここで重要なのは、放デイにおけるデジタルデトックスを単なる『使用禁止』や『一時的な没収』と捉えないことである。そこには確かに“善”の側面がある一方で、使い方を誤れば“悪”にもなり得る。その両面を冷静に見つめる視点が、今の放デイには求められている。


目次

デジタルデトックスの「善」の側面

まず、デジタルデトックスがもたらす良い影響について整理してみたい。

① 感覚と身体の回復

発達特性のある子どもは、視覚・聴覚などの感覚刺激に敏感なことが多い。長時間の動画視聴やゲームは、本人が自覚しないまま脳疲労を蓄積させ、情緒の不安定さやイライラ、切り替えの難しさにつながることがある。

デジタルから一時的に離れることで、

  • 表情が柔らぐ
  • 声のトーンが落ち着く
  • 周囲への注意が向きやすくなる といった変化が見られる子も少なくない。これは「我慢させた結果」ではなく、刺激量が調整されたことによる回復反応と捉えることができる。

② 人との関わりが生まれやすくなる

デジタル機器がない、あるいは使用が限定された空間では、自然と人との関わりが生まれやすくなる。ボードゲーム、制作活動、集団遊び、何気ない会話。

「一緒にやろう」 「教えて」 「すごいね」 といったやり取りは、社会性や自己肯定感を育てる貴重な機会である。

特に、普段は画面の中に安心を求めがちな子どもにとって、リアルな対人関係の中での成功体験は、「人と関わっても大丈夫」という感覚を育てる第一歩となる。

③ 集中力・創造性の回復

デジタル機器は便利である一方、受動的な情報が多いという特徴がある。それに対して、アナログ活動は「自分で考え、選び、手を動かす」ことが求められる。

工作、運動、調理、外遊びなどを通して、

  • 試行錯誤する力
  • 自分なりに工夫する力
  • 失敗から学ぶ力 が自然と引き出される。

これらは、放課後等デイサービスが本来持っている大きな強みでもある。


デジタルデトックスの「悪」の側面

一方で、デジタルデトックスには注意すべき落とし穴も存在する。

① 一律の制限が子どもを追い詰める危険性

発達障がいのある子どもにとって、デジタル機器は単なる娯楽ではなく、

  • 不安を落ち着かせる
  • 気持ちを切り替える
  • 安心できるルーティン として機能している場合がある。

理由や見通しを示さずに一方的に取り上げてしまうと、強い不安やパニック、支援への不信感につながることもある。「使いすぎているからダメ」という大人側の正論が、必ずしも子どもの安心につながるとは限らない。

② 「デジタル=悪」という価値観の押し付け

現代社会において、デジタルスキルは将来の生活や就労と切り離せない力である。タイピング、情報検索、オンラインでのやり取り、ICT機器の基本操作。

これらを一切排除してしまうことは、結果的に社会参加の機会を狭めてしまう可能性がある。放デイは「守る場所」であると同時に、「社会につなぐ場所」でもあるという視点を忘れてはならない。

③ 家庭とのギャップによる混乱

放デイでは禁止、家庭では自由という状況は、子どもを混乱させやすい。

「ここではダメなのに、家ではいい」

この矛盾は、ルール理解や切り替えが苦手な子どもにとって大きなストレスとなる。支援は事業所内だけで完結するものではなく、家庭との連携を前提に考える必要がある。


放デイに求められる「中間支援」という視点

放課後等デイサービスに求められているのは、

  • デジタルを完全に排除する支援
  • 無制限に許可する支援 のどちらかではない。

重要なのは、**使い方を一緒に学ぶ「中間支援」**という視点である。

例えば、

  • 時間を決めて使う
  • 使う前後で気持ちを言語化する
  • デジタルとアナログを組み合わせた活動を行う
  • 集団活動の後のクールダウンとして活用する

こうした関わりを積み重ねることで、デジタルは「依存の対象」から「自分を助ける道具」へと変わっていく。

「今日はここまでで終われたね」 「自分で切り替えられたね」

その小さな成功体験の積み重ねが、自己調整力や自己理解を育てていく。


おわりに

デジタルデトックスの善悪は、決して白黒では語れない。

放課後等デイサービスの役割は、時代に逆行することではなく、時代の中で生きる力を育てることである。子ども一人ひとりの特性を理解し、その子に合ったデジタルとの距離感を、支援者と子どもが一緒に探していく。

デジタルから離す支援ではなく、 デジタルと共に生きる力を育てる支援へ。

それこそが、今、放課後等デイサービスに求められているデジタルデトックスの本質なのではないだろうか。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次