目次
はじめに
放課後等デイサービスは、障害や発達に特性のある子どもたちにとって「安心して過ごせる居場所」であり、「挑戦や成長を後押しする場」でもあります。学校や家庭とは異なる環境の中で、子どもたちの表情や行動が少しずつ変わっていく姿を目にすると、その力を改めて実感します。
ここでは、実際の支援の中で見られた子どもたちの変化と、その背後にある工夫や改善のポイントをご紹介します。
エピソード1:言葉で気持ちを伝えられるようになったAくん
Aくんは、感情を言葉にすることが難しく、不安や不満を泣いて表すことが多いお子さんでした。
- コミュニケーションカードの導入:「楽しい」「いや」「やりたい」などの絵カードを用意し、気持ちを選んで指差せるようにしました。
- スタッフのモデリング:スタッフが「私は楽しいから、このカードを出すよ」と見本を示すことで、カードを使うことへの安心感を与えました。
- 言葉とのリンク付け:カードを使うたびに「いやって言えたね」と声を添え、少しずつ言葉に結びつけていきました。
数か月後には、「いや」「いいよ」などの短い言葉が自然に出るようになり、今では「今日はサッカーしたい!」と自分の希望を伝えられるようになっています。
エピソード2:友だちと関わるようになったBさん
Bさんは、人と一緒に遊ぶよりも一人でブロックに集中することを好むお子さんでした。
- 小集団活動から始める:いきなり大人数の遊びに入れるのではなく、2人での協働作業(ブロックを一緒に積むなど)から取り組みました。
- 役割分担の明確化:遊びに役割を設け、「Bさんは赤いブロックを並べる係」と伝えることで安心して参加できるようにしました。
- スタッフの仲介:友だちの声かけをスタッフが補い、やりとりのハードルを下げました。
やがてBさんから「一緒に作ろう」と友だちに声をかける姿が見られるようになり、今では笑顔で仲間と遊ぶ時間が増えています。
エピソード3:挑戦する力が育ったCくん
Cくんは失敗を極端に嫌い、新しい活動に対して「やらない」と避ける傾向がありました。
- 成功体験を積むステップ化:調理体験でいきなり包丁を使うのではなく、「卵を割る」「野菜をちぎる」など、小さな成功を段階的に積ませました。
- 「失敗しても大丈夫」の安心感:スタッフ自身がわざと「卵を割ったら少しこぼれちゃった」と笑って見せ、失敗が許される雰囲気をつくりました。
- 振り返りの言語化:「自分でできたね」「次は何に挑戦してみようか」と言葉で整理し、成功体験を確かな記憶に残しました。
「できないからやらない」という姿勢から「ちょっとやってみる」へと変わり、成功した時には「またやりたい!」と自ら挑戦を望むようになりました。
放課後等デイサービスの役割と改善の視点
これらのエピソードに共通しているのは、子ども一人ひとりの特性に合わせて環境や活動を工夫することです。
支援のポイントは次の通りです:
- 安心できる環境づくり:否定されない、失敗しても大丈夫という雰囲気が成長の基盤になります。
- 段階的な支援(スモールステップ):大きな目標を小さな成功体験に分けることで、自信と意欲が育ちます。
- 仲間とのつながりを広げる工夫:スタッフの仲介や役割分担で、人と関わる喜びを体験できます。
おわりに
放課後等デイサービスでの成長は、一見すると小さな一歩に見えるかもしれません。しかしその一歩が積み重なり、子どもたちの未来を形づくっていきます。
保護者の方には「できることが増えた」と安心していただき、支援者にとっては「どう工夫すれば子どもの力を引き出せるか」を考える実践のヒントとなれば幸いです。
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