はじめに
放課後等デイサービス(以下、放デイ)は、発達に特性のある子どもたちが放課後や長期休暇中に利用する福祉サービスです。子ども一人ひとりの特性に応じた支援を提供するために、個別支援計画の作成が必須となります。
個別支援計画は、子どもの発達や生活の質を向上させるための指針となるものであり、適切な目標設定や支援内容の明確化が求められます。本コラムでは、専門家としての視点から、放デイでの個別支援計画の立て方について詳しく解説します。
個別支援計画とは
個別支援計画は、児童福祉法に基づき、各事業所が作成することが義務付けられています。この計画は、児童発達支援管理責任者(以下、児発管)が中心となり、保護者や関係機関と連携しながら策定・運用するものです。
個別支援計画の目的
- 子ども一人ひとりの発達や生活を支援するための指針を示す
- 目標に向けた具体的な支援内容を明確にする
- 支援の進捗を把握し、適宜見直す
- 保護者や関係機関と情報を共有し、一貫した支援を提供する
個別支援計画作成の流れ
個別支援計画を作成するためには、以下のステップを踏む必要があります。
① アセスメント(現状把握)
計画作成の第一歩は、子どもの現状を正確に把握することです。アセスメントでは、以下のような情報を収集します。
- 基本情報(氏名、生年月日、保護者の意向など)
- 発達状況(言語、運動、社会性、認知などの発達段階)
- 生活習慣(食事、睡眠、トイレ、着替えなどの自立度)
- 学習状況(学校での適応、得意・苦手なこと)
- コミュニケーション能力(対人関係、表現力、自己主張の仕方)
- 感覚や行動特性(こだわり、刺激への反応、自己調整能力)
アセスメントは、観察・面談・保護者アンケート・学校との連携を通じて総合的に行います。
② 目標設定
アセスメントの結果をもとに、短期・中期・長期の目標を設定します。
- 長期目標(6か月〜1年)
- 例:「友だちと適切なコミュニケーションを取りながら遊べるようになる」
- 中期目標(3か月)
- 例:「自分の気持ちを簡単な言葉で伝えられるようになる」
- 短期目標(1か月〜2か月)
- 例:「『貸して』『ありがとう』などの基本的なやりとりを5回以上成功させる」
目標は「SMARTの法則(具体的、測定可能、達成可能、関連性がある、期限がある)」に基づいて設定します。
③ 支援内容の決定
目標に基づき、具体的な支援方法を決めます。
目標 | 支援内容 | 具体的な方法 |
友だちとの適切なコミュニケーション | ソーシャルスキルトレーニング(SST) | グループ活動で「順番を守る」「相手の話を聞く」練習 |
自分の気持ちを言葉で伝える | 言語的支援 | 「○○したい」「やめて」などのフレーズを繰り返し練習 |
感覚過敏の軽減 | 環境調整 | 静かなスペースを設ける、イヤーマフの活用 |
④ 計画の実施と記録
計画に沿って支援を実施し、日々の記録を残します。
- 活動記録:その日の活動内容、子どもの反応、達成度を記録
- 評価シート:目標達成度を定期的にチェック
- 保護者へのフィードバック:家庭での変化や意見を聞き、支援に反映
⑤ 計画の見直しと更新
支援計画は、定期的に見直しが必要です。
- 3か月ごとに振り返り
- 保護者や関係機関との話し合いを行う
- 必要に応じて目標や支援内容を修正
4. 個別支援計画作成のポイント
① 子どもの強みを活かす
苦手なことにばかり目を向けず、子どもの得意なことを活かして目標を立てることが重要です。
② 家庭や学校との連携を密にする
放デイだけでなく、家庭や学校でも一貫した支援ができるように連携を取ります。
③ 柔軟な対応を心がける
子どもの状況は常に変化するため、計画も固定化せず柔軟に調整することが大切です。
まとめ
個別支援計画は、放課後等デイサービスの支援の質を高める重要なツールです。アセスメントから目標設定、支援の実施、評価・見直しまでのプロセスを丁寧に行うことで、子ども一人ひとりに最適な支援を提供できます。
子どもの成長を支えるために、支援者として常に学び、試行錯誤しながらより良い計画を作成していきましょう。
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