幼児期の発達障がい児に「粗大運動」が必要な理由と具体的な遊び

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【専門家解説】幼児期の発達障がい児に「粗大運動」が必要な理由と具体的な遊び

幼児期は、心と体の土台をつくる非常に大切な時期です。特に発達障がいのあるお子さまにとって、**粗大運動(体全体を使った大きな動き)**は、単に体力をつけるためだけでなく、認知・感情・社会性・学習面の発達を促す「脳への栄養」のような役割を果たしています。

粗大運動とは、歩く・走る・跳ぶ・登る・投げる・支えるなど、全身の大きな筋肉を使った動きのことです。これらの動きは、日常生活の基本動作や遊び、そして将来の学習の基礎となる重要な要素です。


発達障がい児が粗大運動を必要とする理由

発達障がいのあるお子さまの中には、以下のような特徴が見られることがあります。

  • 体の使い方がぎこちない、不器用に見える
  • 何もないところで転びやすい
  • 椅子に座って姿勢を保つのが苦手(ぐにゃっとしてしまう)
  • じっとしていられない(多動)、または極端に動こうとしない

これらは単なる筋力の弱さだけではなく、**「感覚統合(脳に入ってくる感覚を整理する力)」**の発達が関係していることが多いです。特に以下の3つの感覚を粗大運動で刺激することが重要です。

  1. ボディイメージ(自分の体を感じる力): 自分の体が今どこにあって、どれくらいの大きさかを把握する力。
  2. 前庭感覚(バランス感覚): 体の傾きやスピードを感じ、姿勢を保つ力。
  3. 固有受容感覚(力加減の感覚): 筋肉や関節の動きを感じ、力加減を調整する力。

粗大運動を通してこれらの感覚を育てることで、体の安定性が高まり、情緒の安定や集中力の向上にもつながります。


幼児期に特に大切にしたい「4つの運動要素」

① 姿勢を支える運動(体幹・抗重力進展)

体幹が安定すると、座る・立つ・歩くといった全ての動作の「軸」が整います。

  • 活動例:
    • 動物の模倣(くま歩き、ワニ歩き): 四つ這いで進むことで肩や腰の支持力が育ちます。
    • バランスボール: 座るだけで体幹の筋肉が刺激されます。
    • マット運動: ゴロゴロ転がる(えんぴつ転がり)ことで回転する感覚を養います。
  • 効果: 椅子に座って活動する時間が伸び、園や学校での集団活動に参加しやすくなります。

② バランスを育てる運動(前庭感覚の刺激)

バランス感覚は、転びにくさだけでなく、脳を覚醒させ、感情を安定させる役割もあります。

  • 活動例:
    • 平均台・線の上を歩く: 視覚とバランスを連動させます。
    • トランポリン: 上下の揺れは前庭感覚を強く刺激し、お子さまの「楽しい!」を引き出します。
    • ブランコ・回転遊具: 揺れや回転を経験します。
  • 効果: 不安や落ち着かなさが軽減され、自分の体をコントロールしている実感が持てるようになります。

③ 移動運動(走る・跳ぶ・登る)

移動運動は、空間認知能力(物との距離感)や、全身のコーディネート力を育てます。

  • 活動例:
    • 障害物コース(サーキット遊び): 「くぐる」「またぐ」「のぼる」を組み合わせます。
    • 追いかけっこ: 相手との距離を測りながらスピードを調整します。
  • 効果: 「できた!」という成功体験を積みやすく、自己肯定感の向上に直結します。

④ 力加減を学ぶ運動(固有受容感覚の刺激)

力の入れ具合や、物の扱いを学ぶための運動です。

  • 活動例:
    • ボール遊び(投げる・転がす): 標的に向かって力を調整します。
    • 綱引き・押し相撲: ぐっと力を入れる感覚を学びます。
    • 重い物を運ぶ: 自分の筋肉への負荷を感じます。
  • 効果: 友だちを突き飛ばさない、道具を壊さず扱えるなど、社会性の基盤を整えます。

粗大運動がもたらす「二次的な効果」

粗大運動の発達は、運動機能の向上にとどまらず、以下のような多岐にわたる効果をもたらします。

分類具体的な効果
学習・認知姿勢の保持による集中力の向上、空間認知の向上
情緒・精神体の安定による情緒の安定、自己肯定感の育成
言語・生活呼吸機能の発達による言葉の促進、着替えや食事の動作向上

支援や家庭で大切にしたい3つの視点

粗大運動を行う際に最も大切なのは、**「上手にやらせること」ではなく、「楽しく経験すること」**です。

  1. 「やりたい!」を優先する: できない動きを無理にさせると、運動嫌いにつながります。お子さまが興味を持った動きから始めましょう。
  2. スモールステップで認める: 完璧でなくても、「ここまで登れたね」「1秒立てたね」と、成功した部分を具体的に称賛します。
  3. 遊びの中に組み込む: 訓練としてではなく、日常の遊びの中で自然に感覚を刺激することが、脳の発達には最も有効です。

まとめ

幼児期の発達障がい児にとって粗大運動は、単なる体力づくり以上の意味を持ちます。「体の土台(感覚)」を整えることで、その上に「心の安定」や「知的な発達」という大きな家を建てることができるのです。

発達のスピードには一人ひとり個人差があります。「昨日できなかったことが、今日少しだけできた」という積み重ねが、将来の大きな力になります。ご家庭や支援の現場で、無理なく、笑顔で取り組める活動を一緒に見つけていきましょう。

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