「なんでそんなことするの?」子どもの常同行動に込められた意味とは
子どもが同じ動きを何度も繰り返しているのを見て、「どうしてそんなことするの?」と不思議に思ったことはありませんか?
たとえば、手をひらひらさせたり、床をゴロゴロ転がったり、同じ言葉を何度も言ったり…。
これらは「常同行動」と呼ばれるものかもしれません。
常同行動ってなに?
常同行動とは、周囲からは意味が分かりにくいにもかかわらず、同じ動作や言葉を繰り返す行動のことです。
たとえば、体を前後に揺らす、物を並べる、手を叩く、同じフレーズを繰り返すなどが挙げられます。
こうした行動は、自閉スペクトラム症(ASD)などの発達特性を持つ子どもに多く見られますが、発達障害がない子でも、成長の過程で一時的に見られることがあります。
自己刺激行動との関係
常同行動は、自己刺激行動(self-stimulatory behavior)の一種と考えられることがあります。
自己刺激行動とは、自分自身に感覚的な刺激を与えることで、覚醒の維持や情動の調整、手持ちぶさたの解消などを目的とした行動です。
たとえば、手をひらひらさせることで視覚刺激を得たり、床をゴロゴロ転がることで前庭感覚(バランス感覚)を刺激したりすることがあります。
これらは、子どもが自分の感覚の過敏さや鈍さに対応しようとしている行動であり、本人にとっては安心感や快適さを得るための大切な手段なのです。
どうして常同行動をするの?
常同行動にはいくつかの理由があります。
今回は、自己刺激行動としての側面を中心に、その背景を見ていきましょう。
ASDの子どもは、感覚過敏や感覚鈍麻といった特性を持つことがあります。たとえば、聴覚が鈍い子は物を叩いて音を出し、自分の耳に届くようにしていることがあります。逆に、視覚が過敏な子は強い光を避けるために手をひらひらさせて視界を調整することもあります。
また、ある男の子は授業中に椅子を揺らし続けていました。これは、体の動きを感じることで集中しようとしていた可能性があります。別の子は、床に寝転がってゴロゴロすることで、バランス感覚を刺激して安心感を得ていたようです。
こうした行動は、子どもが「自分の感じ方」と向き合っている証でもあり、自己刺激行動としての意味を持っています。
環境の変化や予測できない出来事に対して、常同行動を通じて自分を落ち着かせようとすることがあります。これは、情動の調整を目的とした自己刺激行動とも言えます。
たとえば、予定変更が苦手な子が、急なスケジュール変更に対して手を叩いたり、同じ言葉を繰り返したりすることで、心の安定を図っていることがあります。
秩序やパターンを好む子は、おもちゃを並べたり、同じ動きを繰り返すことで安心感を得ています。これは、手持ちぶさたの解消や快楽物質(ドーパミン)の分泌による心地よさを求める自己刺激行動とも関連しています。
言葉でうまく伝えられないとき、常同行動で「見てほしい」「気づいてほしい」とサインを出していることもあります。これは、コミュニケーションの手段としての常同行動であり、環境との関わりを求める行動とも言えるでしょう。
どう対応すればいいの?
常同行動は、すぐにやめさせるべきものではありません。むしろ、子どもにとって必要な行動であることもあります。ただし、日常生活に支障が出たり、ケガにつながるような場合は、工夫が必要です。
手を叩き続ける子には、感触ボールやスライムなど、似た刺激を得られるグッズを渡すことで、行動を置き換えることができます。より安全で目立ちにくい自己刺激行動への移行を促すことで、日常生活への影響を抑えることができます。
静かな空間、柔らかい照明、クッションなど、子どもが安心できる環境を整えることで、過剰な刺激を避けることができます。予定変更が苦手な子には、事前にスケジュールを伝えておくと混乱を防げます。
「またやってる!」と叱るよりも、「何か気になることがあるのかな?」と声をかけてみましょう。子どもが何を感じているのか、何を求めているのかを知ることが、対応の第一歩です。
おわりに
常同行動は、子どもが自分の感覚や感情と向き合うための大切な手段です。大人から見ると不思議に思えるかもしれませんが、その行動にはちゃんと理由があります。
自己刺激行動としての常同行動は、覚醒の維持や情動の調整、安心感の獲得など、子どもにとって必要な働きを担っています。
まずは「なぜこの行動をしているのか?」という視点で見守り、必要に応じて環境や遊びを工夫していくことで、子どもが安心して過ごせる時間が増えていくことでしょう。


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