反抗挑戦性障害(ODD)は、大人の指示に反発することや挑発的な態度が継続し、そのために家庭や学校での関係づくりが難しくなる特性をもつ状態です。一時的な反抗期とは異なり、「反抗」に見える行動の背景には、子どもなりの不安・混乱・困りごとが潜んでいることが多く、周囲の適切な理解と支援がとても重要です。
反抗挑戦性障害(ODD)のお子さまは、大人から見ると「わざと反抗しているように見える行動」をとることがありますが、実際には“自分でもどうして良いかわからないまま必死に気持ちを保とうとしている姿”であることが少なくありません。特に、注意される経験が多い子どもほど自己肯定感が低くなり、「どうせ自分はまた怒られる」「失敗するくらいならやらないほうがいい」と考えてしまうこともあります。だからこそ、支援の際には“失敗を叱る”より“できた部分に注目する”視点が非常に重要です。大人が子どもの小さな変化や努力に気づき、それを短く、具体的に認めることで、安心感が育ち、挑戦しようとする意欲につながります。家庭・学校・放デイが同じ方向を向いて関わることで、子どもは徐々に自己コントロールの力を身につけ、社会の中でより生きやすさを感じられるようになります。
◆ 反抗挑戦性障害(ODD)が起こりやすい背景
反抗挑戦的な行動は“性格”ではなく、以下のような複数の要因が重なって表れると言われています。
・感情コントロールが難しい気質
・ADHDや自閉スペクトラム症など発達特性の併存
・言語化能力の未発達(気持ちを伝えることが難しい)
・自己肯定感の低下(叱られる経験の積み重ね)
・学校・家庭などの環境ストレス
・大人との関係づくりがうまくいかない経験の繰り返し
つまり、反抗的に見える行動の裏には、「困っているのに言葉で助けを求められない」というサインが隠れています。
◆ 小学生向けの支援
1. 感情コントロール支援
小学生は感情を言葉で整理する力が発達途中です。「いまの気持ちカード」や絵を使いながら、自分の気持ちを表現する練習を行い、衝動的な行動を少しずつコントロールできるよう支援します。
2. ルール理解と切り替え練習
活動前に「やること・やらないこと」を視覚的に示すことで、行動の見通しを立てやすくします。切り替えが苦手な子には、タイマーや合図を使ってスムーズに移行できる方法を身につけます。
3. 社会性トレーニング
同年代とのトラブルが起こりやすい時期のため、職員が間に入りながら「順番を待つ」「相手の気持ちを考える」「断る時の言い方」などを実践的に学びます。
4. 成功体験の積み重ね
達成しやすい小さな目標を設定し、「できた!」を増やすことで自己肯定感を育て、前向きな行動につながる土台をつくります。
5. 家庭との連携
家庭と事業所が同じ方向を向けるよう、日々の様子の共有や、ご家庭でも使える声かけ方法を提案しながら一貫した支援を行います。
◆ 中高生向けの支援
1. 自己理解と自己表現のサポート
思春期は主張が強くなる一方で、表現がうまくいかず衝突につながる時期です。「自分の特性」や「どんな場面で困るのか」を整理し、伝わりやすいコミュニケーション方法を一緒に学びます。
2. コミュニケーション訓練
ロールプレイを通して、断り方、意見の伝え方、トラブルの避け方など日常生活で使える実践スキルを身につけます。
3. ストレス対処スキルの習得
学業・部活・友人関係など、ストレスが増える時期です。「気分の整理シート」や「呼吸法」「自分に合うリラックス法」を練習し、暴言や反抗につながる感情の高ぶりを自分で調整できるようにします。
4. 自立に向けた行動支援
課題の分解、時間管理、苦手分野の把握など、自分で行動するためのスキルを身につけ、将来への準備を整えます。
5. 保護者との連携体制
思春期特有の難しいコミュニケーションに悩む保護者へ、相談支援や対応方法のアドバイスを行い、家庭・学校・放デイの三者で子どもを支えていきます。
◆具体的にどうすればよいのか
1.「落ち着くための手段」を事前に決めておく
怒りが爆発してから声をかけても届かないため、前もって“落ち着く儀式”を作っておきます。
例えば:
・深呼吸
・水を飲む
・1分だけ離れる
・気持ちを書いて渡す
2.「できること・苦手なこと」を一緒に整理する
紙に書いて見える化すると、
「苦手は性格ではなく、対処すればよくなる」
という理解が進み、自分を否定しにくくなります。
叱責が増えると自己肯定感が下がり、反抗が強まるため、
- 注意は短く
- 感情的に叱らない
- 解決策を一緒に探す
という姿勢が効果的です。
3. ロールプレイングを取り入れる
実際のトラブル例を“演じてみて”
・上手な断り方
・言い過ぎてしまった時の言い換え
・イラっとした時の安全な切り抜け方を一緒に練習することで、成功しやすくなります。
本人に小さな成功体験を積ませ、そのことに対して適切な褒めを行う。
「言い方が優しかったね」「今、待てたね」など“できた瞬間”に短くほめると、自分を肯定できる経験が増えます。
◆まとめ
反抗挑戦性障害(ODD)は「反抗的な性格」ではありません。
感情調整・対人関係・自己理解の課題が複合して表れる行動特性であり、環境調整や丁寧な関わりによって改善していく可能性が十分にあります。
子ども本人が自分の特性を理解し、大人も適切に関わることで、
子どもが生きやすい環境や関係性は必ずつくっていくことができます。

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