【専門家監修】不登校の背景にある発達障害:理解と適切な支援で、お子様の未来を拓く

「うちの子、最近学校に行きたがらない…」「もしかしたら、何か発達の問題があるのかも…」

不登校や登校しぶりのお子さんの中には、発達障害を持つお子さんや、その特性が部分的に見られるいわゆるグレーゾーンのお子さんが少なくありません。

不登校のきっかけや、お子さんの複雑な気持ちを理解し、親御さんがどのように寄り添い、具体的な対応をしていけば良いのでしょうか。

目次

不登校のきっかけと発達障害の関連性

不登校の理由は多岐にわたりますが、お子さんの発達特性が、学校生活における困難さを増幅させている可能性も考慮する必要があります。

小学生の不登校のきっかけ(小学6年生への回答)

  • 先生のこと(30%)
  • 身体のこと(27%)
  • 生活リズムの乱れ(26%)

中学生の不登校のきっかけ(中学2年生への回答)

  • 身体の不調(33%)
  • 勉強がわからない(28%)
  • 先生のこと(28%)

これらのきっかけの背景には、発達障害の特性が影響している場合があります。

◆ ASD(自閉スペクトラム症)の特性例:

  • 対人関係やコミュニケーションの困難さ: 友達との適切な距離感がつかめず孤立しやすい、言葉の裏の意味を理解しにくい、特定のルールや手続きへの強いこだわりから集団行動になじめないなどが、いじめや仲間外れにつながることがあります。
  • 感覚過敏: 音、光、におい、肌触りなどに過敏さを持つ場合、教室の騒がしさや制服の素材などが強いストレスとなり、登校を妨げる要因となることがあります。
  • 変化への強い抵抗: 予定の変更や見通しの立たない状況に強い不安を感じやすく、学校行事やクラス替えなどが大きな負担となることがあります。

◆ ADHD(注意欠如多動症)の特性例:

  • 集中困難や衝動性: 授業中に集中することが難しく、周りの音や動きに気を取られやすい、落ち着きがなく席を立ってしまう、衝動的な言動により周囲とのトラブルが生じやすいなどが、学習の遅れや先生からの叱責につながり、学校への苦手意識を高めることがあります。
  • 感情のコントロールの難しさ: 感情の波が激しく、些細なことで癇癪を起こしたり、落ち込んだりすることが、学校生活での困難さを増幅させる可能性があります。

LD(学習障害)の特性例:

  • 読み書き、計算などの特定の学習の困難さ: 周囲と同じように学習できないことへの劣等感や焦りが、学習意欲の低下や学校への抵抗感につながることがあります。努力しても成果が出にくいことから、自己肯定感を著しく損なう可能性もあります。

発達障害の特性を持つお子さんの不登校は、単なる「怠け」や「わがまま」と捉えられがちですが、その背景には特性による生きづらさが深く関わっています。

特性に気づかず、適切な支援が行われない場合、不登校が長期化するだけでなく、二次的な精神疾患(うつ病、不安症など)やひきこもりのリスクを高めてしまう可能性があります。

お子さんの気持ちを理解する:不登校時のアンケート結果から

不登校のお子さんの気持ちを理解することは、適切な支援の第一歩です。

小学生が不登校になった時の気持ち(小学6年生への回答)

  • ほっとした・楽な気持ち(70%)
  • 自由な時間が増えて嬉しかった(66%)
  • 勉強の遅れに対する不安があった(64%)

中学生が不登校になった時の気持ち(中学2年生への回答)

  • 勉強の遅れに対する不安があった(74%)
  • 進路・進学に対する不安があった(69%)
  • ほっとした・楽な気持ち(69%)

これらの結果から、不登校のお子さんは、学校という環境から離れることで一時的に安心感や解放感を得る一方で、学習の遅れや将来への不安も抱えていることがわかります。特に中学生になると、進路への意識が高まるため、不安も大きくなる傾向があります。

保護者ができること、気をつけること

お子さんの複雑な気持ちを受け止めながら、親御さんはどのように対応していけば良いのでしょうか。

■ 保護者が気をつけたいこと

学校に行かせることを無理強いしない

「なぜ行かないんだ!」と責めたり、無理やり連れて行こうとしたりすることは、お子さんの心をさらに追い詰め、状況を悪化させる可能性があります。まずは、お子さんの「行けない」という気持ちに寄り添い、その理由をじっくりと聞くことが大切です。

親御さん自身を過度に責めないようにする

「自分の育て方が悪かったのではないか」と自分を責めてしまう親御さんもいらっしゃいますが、不登校の原因は一つとは限りません。ご自身を責めすぎず、周りのサポートを積極的に求めることが大切です。

お子さんが話したくない要因を無理に追及しない

不登校の原因、将来のこと、勉強のことなど、お子さんが話したくないと感じていることを無理に聞き出そうとすると、信頼関係を損なう可能性があります。お子さんが安心して話せるようになるまで、静かに見守ることも重要です。

保護者ができること

安心できる居場所を作る

家庭がお子さんにとって安心できる安全基地となるように努めましょう。お子さんがリラックスできる空間、自分のペースで過ごせる時間、そして何よりも親御さんの温かい受容的な態度が大切です。

興味のあることについて一緒に話をする

お子さんが興味を持っていること、好きなことについて積極的に話を聞き、共感することで、親子のコミュニケーションを深めます。共通の趣味を見つけて一緒に楽しむのも良いでしょう。

簡単な用事やお手伝いをお願いして、できたら具体的に褒める

成功体験を積み重ねることは、自己肯定感を高める上で非常に重要です。「〇〇を手伝ってくれてありがとう。とても助かったよ」のように、具体的な行動を褒めることで、お子さんは自分の存在価値を実感しやすくなります。

他のきょうだいに対して、不登校について決して否定的な言葉遣いをせずに説明をする

他のお子さんには、「〇〇(不登校のお子さんの名前)は今、少ししんどい時期なんだ。みんなで優しく見守ってあげようね」のように、理解を促す説明をしましょう。不登校のお子さんを責めるような言葉は絶対に避け、兄弟間の関係が悪化しないように配慮が必要です。

他のきょうだいとの時間も大切にし、褒め言葉などの声かけも忘れずに行う

不登校のお子さんに気を取られがちになりますが、他のお子さんへの関わりもこれまで通り大切にしましょう。「〇〇ちゃん、お手伝いありがとうね」「〇〇くん、頑張っているね」といった声かけは、すべてのお子さんの心の安定につながります。

お子さんのペースに合わせた生活リズムを整える

無理に学校のスケジュールに合わせるのではなく、お子さんの体調や意欲に合わせて、徐々に生活リズムを整えていくことを意識しましょう。

適度な距離感を保つ

親御さんが心配する気持ちは理解できますが、過干渉は逆効果になることもあります。お子さんの自主性を尊重し、見守ることも大切です。

家庭学習のサポート:多様な選択肢

学校に行けない間も、学習への不安を軽減するための様々な方法があります。お子さんの状況や特性に合わせて、適切な方法を取り入れてみましょう。

家庭教師:

・メリット: 一人ひとりの学習状況やペースに合わせた個別指導を受けられます。発達障害の特性に理解のある家庭教師を選べば、より効果的なサポートが期待できます。不登校のお子さんに特化した家庭教師サービスもあります。

・注意点: お子さんが家庭教師との相性をどう感じるか、無理のない頻度や時間設定であるかなどを考慮する必要があります。

ICT学習(タブレット、オンライン教材など):

・メリット: 自分のペースで学習を進められ、時間や場所にとらわれない柔軟な学習が可能です。非対面でのコミュニケーションが可能な教材もあり、対人関係に不安があるお子さんにも取り組みやすい場合があります。ゲーム感覚で学べる教材もあり、学習への意欲を引き出しやすいです。

・注意点: 視覚的な情報過多にならないよう配慮したり、使いすぎによる生活リズムの乱れを防ぐためのルール作りが必要です。

学習塾(個別指導型、不登校特化型など):

・メリット: 個別指導であれば、遅れた部分を本人のペースで学習できます。不登校のお子さんに特化した塾では、心理カウンセラーや不登校経験のあるスタッフがサポートしてくれる場合があり、学習面だけでなく精神的なケアも期待できます。学校以外の場所へ外出する機会となり、社会とのつながりを保つ意味でも重要です。

・注意点: 集団授業が苦手なお子さんには個別指導型を選ぶ、送迎の負担などを考慮する必要があります。

フリースクール、サポート校:

・メリット: 学校とは異なる環境で、少人数制で丁寧なサポートを受けられる場合があります。発達障害に理解のあるスタッフがいたり、同じような悩みを抱える仲間と出会えることもあります。

・注意点: 学費がかかる場合がある、卒業後の進路が学校の卒業資格とは異なる場合があるなどを確認する必要があります。

専門機関との連携:一人で抱え込まない

不登校の背景に発達障害の可能性が考えられる場合や、親御さんだけで対応に困る場合は、ためらわずに専門機関に相談しましょう。

学校のスクールカウンセラー、特別支援コーディネーター: お子さんの状況や特性について相談し、学校としてどのような支援ができるか連携を求めることができます。

児童発達支援センター、療育機関: 発達に関する専門的な相談や評価、療育を受けることができます。

発達障害者支援センター: 発達障害に関する総合的な情報提供や相談支援を行っています。

精神科、児童精神科: 精神的な不安定さや二次障害が疑われる場合は、専門医の診察を受けることが重要です。

地域の相談支援事業所: 福祉サービスの利用など、様々な相談に乗ってくれます。

大切なのは、親御さんが一人で問題を抱え込まず、専門機関と連携しながら、お子さんに合った支援を見つけていくことです。

まとめ:お子様の未来を見据えて

不登校支援の最終的な目標は、単に学校に復帰させることだけではありません。お子さんが自分らしく生きていくための力を育むこと、将来に向けての選択肢を広げることも視野に入れる必要があります。

お子さんの興味や才能を見つけ、それを伸ばせるような活動や学びの機会を提供することも重要です。好きなことや得意なことを見つけることで、自己肯定感が高まり、社会とのつながりを持つきっかけになることもあります。

お子さんのペースを尊重しながら、将来の可能性を信じ、温かく見守っていくことが、何よりも大切です。

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