ワーキングメモリとは
ワーキングメモリ(作動記憶/作業記憶)とは、脳の前頭前野の働きの一つで、作業や動作に必要な情報を一時的に記憶し処理する能力です。
ワーキングメモリの役割は、入ってきた情報を脳内にメモ書きし、どの情報に対応すればよいのか整理し、不要な情報は削除することです。ワーキングメモリの働きによって、瞬時に適切な判断を行うことができるともいわれています。
よく「メモ帳」に例えて説明されることが多いですね!
「ワーキングメモリってね、頭の中にある『メモ帳』みたいなものなんだよ。このメモ帳は、とっても特別で、何かを覚えたり、考えたりするときに使うんだ。
たとえば、先生が黒板に書いた問題を見て、その答えを頭の中で考えているとき、この『メモ帳』にいろいろなことを書き込んで、それを見ながら考えているんだよ。でも、このメモ帳はちょっと小さいから、あんまりたくさんのことを一度に書けないの。それに、ずっと同じことを書いておくこともできないんだ。だから、新しいことを考えたり、覚えたりするたびに、少しずつメモを消して新しいことを書かないといけないんだよ。
たとえば、友だちの家に遊びに行くときに、道順を覚えなきゃいけないとするよね? その時、まず頭の中のメモ帳に『右に曲がる』って書いて、次に『スーパーの前を通る』って書く。でも、もっとたくさんの情報が増えると、今度はメモ帳がいっぱいになっちゃうから、次の『橋を渡る』っていう情報を書き込むために、最初に書いた『右に曲がる』を消さないといけないかもしれないんだ。
だから、ワーキングメモリはとても大事なんだけど、一度に使いすぎると、何かを忘れちゃうこともあるんだよ。」
子どもの発達における困りごと・対処方法
記憶は、長期記憶と短期記憶の大きく2種類に分類することができます。そのうち短期記憶に関連しているのが、ワーキングメモリです。
ワーキングメモリの一時的な記憶機能によって私たちの判断や行動が支えられています。では、ワーキングメモリの働きに困難がある場合、困りごとが起きたときの関わり方のポイントをお伝えします。
時間割や持ち物、連絡事項などは一緒に確認しましょう。また勉強する時は刺激となるものが視覚的に情報が入らない環境づくりを設け、カーテンを閉める、仕切りを立てる、などの方法がおすすめです。子どもが衝動的な行動をする前に、座って話を聞こうなどと声をかけをすることで行動を正したり、混乱をなくしたりできます。
活動の流れを最初に伝え、視覚的にまた具体的に伝えるとより効果的があると思います。終わる前に次の活動内容を伝える等、最後までの行動を示したり、視覚的に提示する等、確認できる環境を作ることも必要です。事前に1日のスケジュールを教えておくこと、切り替える少し前に次は何をするのかを思い出させることが大切です。いきなり「次は〇〇をするよ」と言われてパニックにならないように、行動の流れを頭に置き続けられるようなスケジュール、またはそれを構造化し、視覚的に分かりやすくすることが大切です。
スモールステップで少し読んで解釈を確認することを繰り返しながら読み進めること、計算をするときにも、段階的に区切ったりする等、文章題を視覚的に表現することで全体の流れを理解しやすることも大切です。また復唱しながら書く…書こうとしていることを声に出すことで注意を集中しやすくなります。
ワーキングメモリはトレーニングできる?
ワーキングメモリはトレーニングすることで鍛えられるのかという意見に対して、ワーキングメモリの容量を増やすのは短期・単純なトレーニングでは難しいようですが、トレーニングや遊びなどでさまざまな刺激を入れることで、さまざまな能力が高まり、それぞれが結びつくことで徐々にワーキングメモリが向上すると言われています。
例えば絵本の読み聞かせ等も効果が期待できます。
耳から入ってくる声と言葉が頭の中で紐づく、また絵本の中の挿絵と言葉が紐づくことで、頭の中で映像化することでワーキングメモリが向上していきます。
また運動することも大切です。
公園の遊具で遊んだり、木登りをする、いろいろな歩き方をする、ほかの子と遊ぶ等、体をたくさん使うことで、五感からさまざまな刺激が入り、そこから遊び方を工夫したり、他者とコミュニケーション取ることで、ワーキングメモリの機能が高まっていきます。
ワーキングメモリと発達支援について
ワーキングメモリは脳の機能の一つで、情報を一時的に記憶・整理することで私たちの判断と行動に広く影響しているともいわれています。この機能に困難があると指示に従うことが苦手、会話のキャッチボールが出来ない、状況判断が出来ず、空気の読めない発言といった困りごとが生じます。本人はどうにもできず困っているにも関わらず、周囲からの理解が得られずに苦しんでしまうこともあります。
ワーキングメモリの機能自体の改善に関しては、現在においても研究段階です。周囲の関わり方や適切な環境づくりによって、子どもの困り感を軽減したり、トレーニングした分野において改善したというケースも報告されています。まず障害の特性を理解する、そして環境調整やツールの活用、会話する際には話す順番を工夫するなど、それぞれの子どもに合わせたサポートをしていくことが大切です。
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