発達障害を持つお子様が不登校となる原因について

発達障害を持つお子様の中には、学校に適応することが難しく、不登校になってしまうケースがあります。不登校の原因は一つではなく、環境要因、心理的要因、学習面の困難、人間関係の問題などが複雑に絡み合っています。

また、不登校になるまでの過程もさまざまで、一気に学校に行けなくなるケースもあれば、少しずつ登校が難しくなる場合もあります。早期に適切な対応を行うことで、不登校を防ぐことや、再び学校へ通えるようサポートすることが可能です。本稿では、発達障害と不登校の関係について詳しく解説し、その主な原因と具体的な対応策について探ります。

目次

〈要因と対策例 1 〉 環境要因

環境要因:学校の環境が発達障害の特性に合わない場合、登校が困難になることがあります。

① 過剰な刺激によるストレス
発達障害のあるお子様は、感覚過敏を持つことが多く、日常的な刺激が強いストレスになることがあります。特に、聴覚過敏・視覚過敏・嗅覚過敏・触覚過敏などがある場合、学校の環境は非常に負担の大きいものになります。

聴覚過敏による影響
・教室のざわめきやチャイムの音が大きく聞こえてしまう
・体育館や廊下の反響音がつらい
・クラスメートの話し声や鉛筆の音が気になり、集中できない

視覚過敏による影響
・窓からの強い日差しや蛍光灯の光がまぶしすぎる
・黒板の文字がまぶしくて見えづらい
・カラフルな掲示物が多く、情報量が多すぎて疲れてしまう

嗅覚過敏による影響
・給食のにおいが強すぎて気持ち悪くなる
・教室内のにおいや掃除用具のにおいが耐えられない
・クラスメートの香水や柔軟剤のにおいがつらい

触覚過敏による影響
・制服や体操服の布の感触が不快で着るのがつらい
・他の子どもとぶつかることがストレスになる
・教材や机の表面の感触が気になってしまう

このように、学校の環境が本人の感覚に合わない場合、登校すること自体が苦痛になり、不登校につながることがあります。

② 学校のルールに適応できない
学校では、時間割に沿った生活や集団行動が求められます。しかし、発達障害の特性によって以下のようなことが苦手なお子様も多く、それが登校のハードルとなることがあります。

・時間どおりに行動するのが難しい → 朝の準備に時間がかかり、遅刻しやすい
・一斉指示に従うのが苦手 → 「ノートを開いて」「黒板を書き写して」といった指示をすぐに実行できない
・長時間じっと座っているのがつらい → ADHDの特性があると、授業中に集中し続けることが難しい
・グループ活動や班行動が苦手 → コミュニケーションの難しさから、孤立しやすい

学校のルールに適応できず、先生や友達に注意されることが増えると、次第に学校が「自分に合わない場所」になってしまい、不登校へとつながることがあります。

③ 教師の理解不足
発達障害についての知識や理解が十分でない先生がいると、学校生活がより困難になります。例えば、

・「努力が足りない」と誤解される → 実際は特性のためにできないだけなのに、怠けていると思われてしまう
・「他の子と同じようにやりなさい」と強要される → 個別の配慮がないと、適応が難しくなる
・トラブルの原因を本人のせいにされる → 実際には環境の影響が大きいのに、本人が悪者にされてしまう

教師からの理解が得られないと、子どもは自己肯定感を失い、学校に行くこと自体が苦痛になってしまいます。

〈要因と対策例 2 〉 心理的要因

心理的要因:発達障害のあるお子様は、学校生活の中で強い不安やストレスを感じることがあります。

① 自己肯定感の低下
発達障害の特性によって、周囲と比べて「できない」ことが多いと、自信を失いやすくなります。例えば、

・漢字テストでいつも点数が低い → 「自分は勉強ができない」と思い込んでしまう
・体育の授業で動きがぎこちない → 友達に笑われてしまい、運動が嫌いになる
・ルールがわからず怒られる → 「なんで自分だけうまくできないんだろう」と落ち込む

このように、自己肯定感が下がることで、学校へ行く意欲がなくなってしまいます。

② 学校への恐怖心
過去に学校で嫌な経験をすると、それがトラウマになり、登校が難しくなることがあります。

・授業中に指名されて答えられなかった → 「また失敗したらどうしよう」と思い、授業が怖くなる
・先生に叱られたことがある → 「先生に怒られるかもしれない」と思い、不安になる
・友達とのトラブルがあった → 「また仲間外れにされるかも」と思い、学校に行きたくなくなる

このように、学校への恐怖心が強くなることで、徐々に不登校になってしまうことがあります。

③ 過度な疲労
発達障害のある子どもは、学校での生活に多くのエネルギーを使っています。

・人に合わせることが多く、疲れる
・感覚過敏で常にストレスを感じる
・授業中に集中し続けるのが難しい

このような状況が続くと、エネルギーが枯渇してしまい、「もう学校に行くのが無理」となってしまうことがあります。

〈要因と対策例 3 〉 学習面の困難

学習面の困難:発達障害のあるお子様の中には、学習そのものに困難を抱えるケースが多くあります。学習がうまくいかないと、学校での成功体験を得ることが難しくなり、やがて登校意欲が低下してしまいます。

① 読み書き・計算の困難(学習障害:LD)
発達障害の一種である学習障害(LD:Learning Disabilities)は、知的な発達に問題はないものの、特定の学習分野において顕著な困難を示します。特に「読字(ディスレクシア)」「書字(ディスグラフィア)」「算数(ディスカリキュリア)」の問題が不登校の要因となることがあります。

ディスレクシア(読字障害)
・文字が歪んで見える、逆さまに見える
・文章を読むのに時間がかかる
・音読が苦手で、授業中に当てられるのが怖い

ディスレクシアのあるお子様は、文章をスムーズに読むことが難しく、国語や社会の授業が苦痛になりがちです。音読の時間が特にストレスになり、「どうせ自分はできない」と自信をなくしてしまうこともあります。

ディスグラフィア(書字障害)
・文字を書くのが極端に遅い
・漢字を覚えられない、何度書いても間違える
・板書を写し終える前に授業が進んでしまう

書字障害があると、ノートを取ることやテストで答案を書くことが苦手になります。教師や親から「もっと丁寧に書きなさい」「書き直しなさい」と言われることが増えると、ますます書くことに抵抗を感じ、勉強への意欲を失ってしまいます。

ディスカリキュリア(算数障害)
・数字や計算の概念を理解しにくい
・計算ミスが多い、暗算が苦手
・時計の読み方やお金の計算が難しい

算数障害のあるお子様は、「何度練習してもできない」「頑張っても成績が上がらない」と感じやすく、自己肯定感の低下につながります。テストで低い点数を取るたびに自信をなくし、不登校になってしまうケースもあります。

② 注意力の問題(ADHD:注意欠陥・多動性障害)
ADHDの特性を持つお子様は、授業中に集中することが難しく、学習についていけなくなることがあります。

・先生の話を最後まで聞くのが苦手
・ノートを取るのを忘れる、必要なプリントをなくす
・宿題をやり忘れる、忘れ物が多い

こうした特性により、先生から叱られることが増えたり、友達から「なんでいつも忘れるの?」と責められたりして、学校が苦痛な場所になってしまいます。

③ 「わかるのにできない」ことへの葛藤
発達障害のある子どもは、知的能力が高い場合でも「思うようにできない」ことで大きなストレスを感じることがあります。

・授業内容は理解しているのに、テストでミスが多い
・口頭では答えられるのに、書くと間違える
・周囲から「なんでできないの?」と言われることが多い

このような状況が続くと、「どうせ頑張っても無駄だ」という思いが強くなり、学習への意欲を失ってしまいます。

〈要因と対策例 4 〉 学習面の困難

人間関係の問題:学校生活では、友人関係や教師との関係が重要ですが、発達障害の特性が原因で人間関係のトラブルを抱え、不登校になることがあります。

① 友人関係のトラブル
発達障害のあるお子様は、コミュニケーションの特性が原因で友達とトラブルになることがあります。

・会話の流れを読めず、話しすぎてしまう
・冗談や皮肉が理解できず、真に受けてしまう
・相手の気持ちを考えずに発言してしまい、トラブルになる

このようなことが続くと、友達との関係がうまくいかず、孤立してしまうことがあります。

② いじめ・からかい
発達障害の特性が目立つことで、クラスメートからからかわれたり、いじめの対象になることがあります。

・「空気が読めない」と言われ、仲間外れにされる
・独特なこだわりや行動を馬鹿にされる
・ゲームのルールを理解できず、仲間に入れてもらえない

いじめが続くと、学校に行くのが怖くなり、不登校につながってしまいます。

③ 先生との関係性

・指示が理解しにくく、何度も聞いてしまう
・忘れ物や遅刻が多く、先生に叱られることが増える
・周囲と違う行動を取ってしまい、教師から厳しく指導される

こうした状況が続くと、教師に対する不信感が強まり、「学校に行きたくない」と思うようになってしまいます。

不登校を防ぐための支援策

不登校を防ぐための支援策:発達障害のあるお子様が安心して学校に通えるようにするためには、環境の調整や適切な支援が不可欠です。

① 環境調整

・静かな教室や個別指導の導入
・感覚過敏への配慮(イヤーマフの使用など)
・視覚的支援(スケジュールの提示、ピクトグラムの活用)

② 心理的サポート

・スクールカウンセラーや心理士との面談を定期的に実施
・成功体験を増やし、自己肯定感を育む
・保護者と教師が協力し、子どもの安心できる環境を作る

③ 学習支援

・ICT機器の活用(音声読み上げソフト、タブレット学習)
・個別の学習プログラムの作成
・特性に合わせた宿題や課題の調整

④ 人間関係のフォロー

・ソーシャルスキルトレーニング(SST)でコミュニケーション力を育てる
・いじめ対策の強化、学校全体での理解促進
・先生が子どもの特性を理解し、適切な指導を行う

まとめ

発達障害を持つお子様が不登校になる原因は、環境の適応の難しさ、心理的ストレス、学習面の困難、人間関係の問題など、多岐にわたります。しかし、適切な支援を行うことで、学校生活を快適なものにし、不登校を防ぐことができます。家庭、学校、専門機関が連携し、子どもに合った支援を行うことが重要です。

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