児発管とは?
児発管(じはつかん)とは「児童発達支援管理責任者」の略称で、児童福祉法に基づいて、障がいのある子どもたちが安心して成長していけるように支援計画を立てる専門職です。
児童発達支援や放課後等デイサービス(放デイ)などの障害児通所支援事業所には、必ず1名以上の配置が義務づけられています。
わかりやすく言えば、「子ども一人ひとりの発達に合わせた支援のプランを作り、それがきちんと実行されているかを見守るリーダー」です。
児発管の主な仕事内容
児発管の仕事は多岐にわたりますが、大きく以下の4つに分けられます。
子ども一人ひとりの発達特性、課題、保護者の希望を丁寧にヒアリングし、「個別支援計画書」を作成します。この計画書は支援の“設計図”のようなもので、どんな支援をどのくらいの期間で、どんな目標に向かって行っていくかを定めます。
作成した計画が、実際に現場で適切に実行されているかをモニタリングし、必要に応じて計画を見直していきます。
支援の5領域:
- 健康・生活
- 運動・感覚
- 認知・行動
- 言語・コミュニケーション
- 人間関係・社会性
たとえば、「朝の支度が苦手なお子さん」に対しては、生活リズムの支援とともに、視覚的なスケジュール表の活用を提案するなど、実践的な工夫が盛り込まれます。
児発管は保護者との“架け橋”のような存在でもあります。お子さんの支援をよりよいものにするために、定期的に面談を行い、保護者の思いや不安に寄り添います。
たとえば…
✅「家で癇癪が増えたのですが、どうしたらいいですか?」
✅「小学校進学後の支援が心配です…」
といった相談に対して、家庭での対応の工夫や関係機関とのつながり方をアドバイスすることもあります。
また、保護者が「ひとりで抱え込まなくてもいい」と思えるように心理的な支えにもなっていきます。
児発管は、医療、教育、行政、相談支援事業所など多くの関係機関と連携します。たとえば以下のような連携が必要になることもあります。
- 小学校の担任と連絡を取り、支援内容を共有
- 診療先の小児科や精神科と情報交換
- 相談支援専門員と次年度の支援方針を調整
こうした「つなぐ」役割を担うことで、子どもを中心とした支援の輪を広げていくのです。
児発管も時には現場に入り、子どもと一緒に活動を行うことがあります。
また、個別支援計画書の作成、モニタリング記録、教材の準備、送迎業務など、事務的な作業も行います。
児発管と相談支援専門員の違いとは?
児発管(児童発達支援管理責任者)とよく混同されがちな職種に、「相談支援専門員」があります。
どちらも障がいのあるお子さんや保護者を支える専門職ですが、役割や立場には明確な違いがあります。
項目 | 児発管(児童発達支援管理責任者) | 相談支援専門員 |
所属 | 児童発達支援、放課後等デイなどの事業所 | 相談支援事業所(市町村委託) |
役割 | 施設内での支援計画の作成・管理 | 利用するサービス全体をコーディネート |
計画 | 個別支援計画(事業所内)を作成 | 障害児支援利用計画(サービス全体)を作成 |
関係者 | 支援スタッフ・保護者・子ども | 保護者・自治体・複数の事業所 |
面談頻度 | 定期的(モニタリング) | 年1〜2回(支給決定時・更新時) |
簡単に言えば、
児発管は「施設内の支援のリーダー」であり、
相談支援専門員は「地域全体の支援コーディネーター」のような役割です。
両者が連携することで、より質の高い支援が可能になります。
児発管になるには?
児発管になるには、実務経験と研修の修了が必要です。
【要件の一例】
- 相談支援の実務経験5年以上
- または、直接支援業務の実務経験8年以上
- または、保育士・教員・看護師などの資格を持ちつつ、相談・支援経験5年以上
経験を積んだ後は、以下のような研修を受けます。
研修名 | 内容 |
基礎研修 | 個別支援計画の作成・支援の考え方(2日間) |
実践研修 | 現場での応用、チーム支援の実際(2日間) |
更新研修 | 5年ごとに、支援の見直し・人材育成(1日程度) |
※研修は都道府県が実施し、定員もあるため、早めの情報収集が大切です。
児発管の勤務先は?
児発管は以下のような施設に勤務しています。
【通所系】
- 児童発達支援(未就学児対象):遊びや生活を通して発達を促す
- 放課後等デイサービス(就学児対象):学校後や長期休みに利用できる発達支援
【訪問系】
- 居宅訪問型児童発達支援:医療的ケアなどで外出が難しい子へ自宅で支援
- 保育所等訪問支援:保育園や幼稚園に専門職が訪問して集団適応を支援
【入所系】
- 障がい児入所施設:医療的ケアや生活支援を提供(福祉型/医療型)
保護者の皆さまへ
児発管は「子どもを理解し、保護者に寄り添う専門職」です。
- うちの子にどんな支援が合っているのか
- どう育っていくのか、将来に向けてどんな準備ができるのか
- 保護者としてどうかかわればいいのか
こうした不安に対して、専門的な視点から一緒に考え、道筋を作っていくのが児発管の役割です。
「相談してよかった」「うちの子のことを本気で考えてくれている」
そんな風に思ってもらえる存在でありたいと、多くの児発管が日々努力しています。
児発管に相談したいときはどうすればいい?
児発管は、施設に通っているお子さんや保護者の支援に直接かかわる立場なので、「ちょっとしたこと」でも気軽に相談していただけます。
相談のきっかけはこんな時…
- 「おうちでの様子が変わったけど、どう対応すればいい?」
- 「幼稚園の先生とうまく連携できない…」
- 「支援の目標、これで合ってるのかな?」
- 「小学校入学後が不安で…」
相談するには?
- 送迎のときや、連絡帳を通して伝える
- 面談の申し込みをする(施設側から提案もあり)
- モニタリングの機会に、保護者の意見として共有する
児発管は「相談のプロ」であると同時に、「一緒に考えるパートナー」でもあります。困ったときに早めに声をかけることが、お子さんの支援にもプラスになります。
児発管がいてよかった!実際のエピソード
最後に、児発管が支援の中で保護者や子どもにとって「心強い存在だった」と実感されたエピソードをご紹介します。
▶ エピソード①:発語の遅れに不安だったお母さん
「2歳半になっても言葉が出ない息子に不安を感じていました。児発管の先生に相談したら、“今の息子さんに合った関わり方”を一緒に考えてくれました。遊びの中での発語の促し方、家庭でできる関わりのヒントをもらい、少しずつ言葉が増えていきました。『心配していたのは一人じゃなかったんだ』と涙が出ました。」
▶ エピソード②:進学に向けて不安だった保護者
「小学校入学を控え、『支援学級か普通学級か』『通学に支援は必要か』など悩みだらけでした。児発管さんが学校の先生とも面談をセッティングしてくれ、関係者みんなで進路について考える場を作ってくれました。“子どもを一番に考えた支援”があるって、こんなに心強いことなんだと感じました。」
こうした存在が「児発管」です。保護者と子どもに寄り添い、支援を“つなぎ、見守り、育てていく”専門職として、日々現場で奮闘しています。
最後に
児発管は、子ども一人ひとりの特性や生活、家族の想いを尊重しながら、支援の方向性を定め、現場や関係機関をつなげていく、いわば「司令塔」のような存在です。
保護者の方にとっても、安心して相談できるパートナーとして、ぜひ信頼し、活用していただければと思います。
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