ASD自閉スペクトラム症と視覚優位性について解説します。
自閉スペクトラム症 ( ASD ) のお子様にみられる「 視覚優位 」とは?
発達障害への支援を行う上で「得意」に対して支援を行うことが重要とされています。得意に対して支援行っていくためには、人間の「認知特性」の仕組みを理解することが重要です。その中でも、発達障害の分野においては、「自閉症スペクトラム(以下ASD)」と「視覚・聴覚の優位性」についてあわせて語られることがあります。
今回は、ASDと認知特性の一つである、視覚優位との関係についてお話していきたいと思います。今回の内容が、お子さまへの子育てや支援の助けにすこしでもなれば幸いです。
認知特性とは
まず、「認知特性」についてお話ししたいと思います。
認知特性とは、「目で見る・耳で聞く」などといった五感を中心とした感覚器官から入ってきた様々な情報を、脳の中で「整理」「記憶」「理解」する能力のことです。
同じ情報を見聞きしていても、人にはそれぞれの認知の得意・不得意があります。認知特性の要素を取り入れた支援を行うことで「できた」「わかった」などの成功体験を生むことができます。
視覚優位とは
認知特性の一つである「視覚優位」とは、「聴覚=耳」に対して、「視覚=目」で取り込んだ情報の処理に優れている人を指します。特徴として、その映像を思い浮かべながら何かを考えたり、学んだりします。
視覚優位者の特徴としては、
〇 得意なこと
・人の顔を覚えやすい
・絵、写真、グラフ、動画など視覚的に指示されたものを理解しやすい
・絵を描くことが得意
・漢字を部首で覚えることが得意
・図鑑や百科事典などの、絵や図が多い本を読むこと
・文字や絵で指示された内容は理解しやすい
〇 苦手なこと
・文字だけの文章題
・漢字を似た字と間違えてしまう
・背景は思い出せるが、会話の内容が出てこない
・口頭指示が理解しにくい
と、それぞれの得意、不得意が存在します。
視覚優位なお子様への寄り添い方
視覚優位なお子様の場合、視覚からの情報収集が得意である反面、多く行われてしまうため、その場に必要ではないものをなるべくお子様の視界に入らないように工夫し、視覚から入る刺激を少なくしてあげることが大切です。
例えば、教室で過ごす場合、黒板の周りには必要な情報以外掲示しない、机の上にはノートのみを出し、必要なタイミングで教科書などを取り出すなどがあります。また、個別で対応ができる場合は、パーテーションなどで区切り、他の情報が入りづらい、気が散らない空間を作ってあげることなども手の一つです。
視覚優位なお子様は、聴覚での情報処理が苦手であるため、こちらからの声掛けだけでは理科が難しい場合があります。視覚からの情報処理能力を活かしてあげることで、お子さまにとっても周りの方にとっても過ごしやすい環境を作ることができます。
具体的な支援方法の例として、
・視覚的に捉えやすい教材を用意する
・カラフルな教材を選択する
・絵や図を用いる
などがあります。文字だけのワークシート、白黒ばかりの教材、動きのない授業など、一般的に見ても楽しい、面白いと感じづらいものばかりになってしまうと、視覚優位のお子様の場合、集中力・理解度の低下につながってしまいます。少しの合理的配慮で、特性を持ったお子様に対してだけでなく、全体に対しても分かりやすい学習環境へと変化します。
まとめ
今回は、ASDのお子様にみられる視覚優位の特徴についてお話ししましたが、視覚優位という特性は、直前でもお話しした通り一般的なお子様にも多くあてはまる場合がございます。視覚的情報を環境や教材に多く取り入れ、その他のものを取り除いてあげることで、その子にとって過ごしやすい環境となります。
お子様の発達について、少しでも疑問に思ったり不安に感じたりすることがあれば、ぜひ抱え込まずに専門機関へ相談してみてください。
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