発達障害児との非言語コミュニケーションの重要性

発達障害を抱える子どもたちとのコミュニケーションは、親や支援者にとって特別な意味を持ちます。

特に、言葉での意思疎通が難しい場合には、非言語コミュニケーションが重要な役割を果たします。非言語コミュニケーションとは、言葉以外の方法、例えば表情、視線、ジェスチャー、身体の動き、声のトーンなどを用いて意思を伝える手段のことです。
ここでは、発達障害児における非言語コミュニケーションの重要性と、それを実践するための具体的な方法について解説します。

目次

非言語コミュニケーションとは

非言語コミュニケーションとは、ノンバーバルコミュニケーションとも言われ、いわゆる言葉を使わないコミュニケーションを指します。以下のようなものが非言語コミュニケーションにあたります。
目線、表情、身振り・手振り(ジェスチャーを入れる)声のトーンや大きさ相手との距離(パーソナルスペース)の取り方等また、お子さんを叱るときや注意するときに、表情、目線、声色や声の大きさを選んでいると思います。そういった言葉を介さないコミュニケーションを、《非言語コミュニケーション》と呼びます。
乳幼児期や学齢期に非言語コミュニケーションが大切な理由としては以下の通りになります。

非言語コミュニケーションが重要な理由

(1) 言語能力の差を補う手段
発達障害を持つ子どもたちの中には、言葉で自分の気持ちや欲求をうまく表現できない場合があります。その代わりに、視線やジェスチャー、表情などで意思を伝えようとすることがあります。非言語コミュニケーションは、こうした子どもたちが自分を表現し、周囲とつながるための大切な手段です。

(2) 情緒的なつながりを深める
非言語コミュニケーションは、言葉を介さずに心を通わせる方法でもあります。親や支援者が子どもの非言語的なサインを読み取ることで、子どもは「自分を理解してもらえている」と感じ、安心感を得られます。この安心感が、信頼関係の基盤を築きます。

(3) 行動の背景を理解する鍵
子どもが突然泣き出したり、物を投げたりする行動には、必ず何らかの理由があります。その理由を探る上で、非言語的なサイン(例えば、表情の変化や体の動き)が重要な手がかりとなることがあります。
人と人のコミュニケーションにおいて、非言語コミュニケーションが果たす役割がとても大きいからです。7%が言語コミュニケーションによるもので、93%が非言語コミュニケーションこれを「メラビアンの法則」といいます。私たちは、相手の表情や声の大きさなどを、話す内容よりも重要な情報として受け取っているのです。

大人になると、人前で話すスピーチや、プレゼンなどの機会を通じて、目線やジェスチャーについて指導を受ける機会がありますが、幼児期にはそういった機会はほぼありません。仮に発表会などのきっかけがあったとしても、セリフが言えたらよし!または、大きな声で言えたらよし!といった程度です。
日常生活の中で、どのような表情や声のトーンを使えばより感情や内容が伝わるか、といったことまで考えるチャンスがないのが普通です。また、学校や幼稚園ではそこまで指導する余裕もないのが現実です。

非言語コミュニケーションを実践するためのポイント

(1) 観察力を養う
非言語コミュニケーションの基本は、子どもの行動や仕草を注意深く観察することです。例えば、

表情:笑顔で楽しんでいるか、眉をひそめて不安を感じているか。
視線:どこを見ているか、何に興味を示しているか。
身体の動き:手を伸ばして何かを求めているか、身体をそむけて拒否しているか。

こうした細かいサインを見逃さないことが大切です。

(2) 子どものペースに合わせる
発達障害児の中には、感覚過敏や注意の持続が難しい特性を持つ子どももいます。そのため、子どもが示す非言語的なサインに焦らず応じ、子どものペースに合わせて関わることが重要です。

(3) 視線を合わせる
目を合わせることが難しい子どももいますが、できる限り視線を合わせる努力をしましょう。視線を合わせることで、「あなたに注意を向けています」「あなたの気持ちを理解しようとしています」というメッセージを伝えられます。

(4) ジェスチャーや表情を豊かにする
自分自身がわかりやすい非言語的な表現をすることも、子どもとのつながりを深める上で有効です。明るい笑顔や親しみやすい仕草で接することで、子どもが安心感を抱きやすくなります。

(5) シンボルやビジュアルを活用する
非言語的なサポートの一環として、絵カードや写真、実物を見せることで意思疎通を図る方法があります。特に、視覚優位の特性を持つ子どもには効果的です。

非言語コミュニケーションがもたらす効果

(1) 自己表現の促進
非言語コミュニケーションを活用することで、子どもは自分の気持ちや考えを表現しやすくなります。例えば、簡単なジェスチャーや視覚支援を取り入れることで、言葉がなくても意思を伝えられるようになります。

(2) 問題行動の軽減
多くの発達障害児にとって、言葉で気持ちを伝えられないことがフラストレーションとなり、問題行動につながることがあります。非言語的な手段が増えることで、こうした行動の頻度を減らせる可能性があります。

(3) 親子の信頼関係の向上
子どもの非言語的なサインを受け止め、それに応じることで、親子の絆が深まります。親が子どもの気持ちに寄り添う姿勢を見せることで、子どもは「受け入れられている」という感覚を強く持つようになります。

親や支援者が心がけたいこと

(1) 焦らないこと
非言語コミュニケーションはすぐに効果が現れるものではありません。小さな成功を積み重ねながら、長い目で関係を築いていくことが大切です。

(2) 自己ケアを忘れない
発達障害児との関わりは、親や支援者にとってエネルギーを要するものです。自分自身の心と体をケアする時間を持ち、余裕を持って子どもに向き合える環境を整えましょう。

おわりに

子どもたちはこれから先の人生で、友達関係、先生との関係をうまく築いていかなくてはなりませんし、コミュニケーション能力はいつでもどこでも求められるスキルです。そのコミュニケーション能力の大半を占める非言語コミュニケーション能力を子どものうちから伸ばしておけば、これからの人生の選択肢がぐっと広がっていきます。また、言語コミュニケーションは語彙力の問題があり、低年齢からすぐに伸ばすことは難しい一方、非言語コミュニケーションは子どもが感覚で身につけやすいという点も、幼児期や学齢期から取り組みやすい理由のひとつです。

発達障害児との非言語コミュニケーションは、親や支援者が子どもを深く理解し、子ども自身が「ありのままの自分」でいられる環境を作るための重要な手段です。言葉に頼らない新しいつながり方を模索しながら、子どもの成長を見守りましょう。それは、子どもだけでなく、大人自身にとっても豊かな学びと成長の機会となるはずです。

自分では笑っているつもりでも、周りからはそう見えていないこともあります。
まずは自分以外のほかの人たちの非言語コミュニケーションをよく観察し、お手本を見つけてその後に自分の非言語コミュニケーションを振り返ることで、徐々に非言語のコミュニケーション能力が身についてきます。
お子様へ実践する場合、家庭でもできるのがアナログゲーム等のカードゲームやジェスチャーなどを通して伝える伝言ゲームが有効です。

ご家族の皆様で、楽しみながらお子様の非言語コミュニケーションを伸ばしてみてはいかがでしょうか?

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