子どもが運動を苦手なのも発達障害!?発達性協調運動障害ってなに?

 発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder, DCD)は、発達障害の一種として知られていますが、その認知度は他の発達障害と比べて低い傾向にあります。この障害は、子どもの発達段階で見られる運動スキルの困難さを特徴とし、学業や日常生活にさまざまな影響を及ぼします。本コラムでは、発達性協調運動障害の特徴、影響、支援方法について詳しく解説します。

目次

発達性協調運動障害の特徴

 発達性協調運動障害を持つ子どもは、年齢や知的能力に対して期待される運動スキルを習得することが難しいとされています。この障害は、基本的な運動能力から微細な手先の動作まで、さまざまなレベルで影響を及ぼします。たとえば、歩く、走る、ジャンプするといった基本的な動作が他の同年代の子どもよりもぎこちなく、バランスを保つことが難しい場合があります。加えて、手先を使う微細運動、例えばボタンをかける、靴ひもを結ぶ、鉛筆を正しく持って文字を書くといった日常的な動作も苦手です。このような運動スキルの発達の遅れは、子どもが周囲から遅れをとっていると感じさせる要因となり、自尊心や社会的な交流にも影響を与えることがあります。子どもによって、乳幼児期の粗大運動には全く遅れや苦手はなかったものの、幼稚園や小学校に行くようになり、微細運動を必要とする場面が増え、微細運動の困難さが顕著になる場合もあります。

【特徴】

ふらふら歩く、すぐ転んでしまう。・姿勢の維持が難しい、崩れやすい、・スポーツが苦手、・よく物を落とす、食べこぼしがある。・箸やハサミを使うのが苦手。・書字が苦手。・発音が苦手など。

日常生活と学業への支援

発達性協調運動障害は、子どもの日常生活においてさまざまな問題を引き起こします。たとえば、学校生活では、書字や図工、体育などの活動が難しく感じられることが多く、これにより学業成績に影響を与える可能性があります。特に、板書をノートに写す、手先の器用さが求められる作業、スポーツでのパフォーマンスなどが他の子どもと比較して劣る場合、子どもは自己評価を低く感じることがあり、これが学校生活全般への意欲を低下させる要因となることがあります。

また、発達性協調運動障害を持つ子どもは、遊びやスポーツの場面でも困難を感じることがあります。例えば、サッカーや野球などのチームスポーツにおいては、ボールをうまく扱うことができず、仲間との連携が難しくなる場合があります。これにより、友達との交流が難しくなり、孤立感を感じることが増えることがあります。特に幼少期からの社会的なスキルの発達において、運動スキルの不足が人間関係に影響を及ぼすことが懸念されます。

発達性協調運動障害への支援

発達性協調運動障害に対する効果的な支援は、早期の診断と介入が重要です。作業療法や理学療法を通じて、運動スキルを向上させるためのトレーニングが行われることがあります。これらの療法では、子どもの個別のニーズに合わせたプログラムが提供され、運動の基礎的なスキルを向上させることを目指します。また、家庭や学校での環境調整も必要です。例えば、学校では、書字の代替手段としてコンピュータを使用する、体育の授業での特別なサポートを提供するなど、子どもの困難さを軽減するための配慮が求められます。

さらに、発達性協調運動障害を持つ子どもが自尊心を保ちながら成長するためには、成功体験を積むことが非常に重要です。子どもが得意な分野や興味を持つ活動を見つけ、それに集中できる環境を整えることが大切です。また、親や教師は、子どもの小さな成功を積極的に認め、励ますことが、子どもの自己肯定感を高める一助となります。

運動療育アプローチの重要性

日常生活の中には感覚の協調を必要とする事が多く、目から見た情報と体の動きを協調させたり、左右の手の動きを協調させたりすることも必要です。

無意識に当たり前に出来ている、感覚と行動の協調は一部の発達性協調運動障害の特徴として大変難しい行動であることが少なくありません。

運動療育を通して、感覚や行動の協調を学ぶことも目的のひとつです。感覚や行動の協調は日常生活や運動以外に、勉強や話を聞く、集中するなどにも必要です。

鉛筆を握って字を書く際、視覚で字を書く位置やバランスを確認しつつ指先で鉛筆をコントロールし、書きたい文字を脳で考えて字を書きます。運動療育によって感覚や行動の協調がスムーズに行えるようになると、学習意欲が向上することもあります。また、集中力の向上、着座している時間が増える効果もあります。

運動療育によって、自分自身の体をコントロールする能力を身に付ける目的もあります。発達性協調運動障害を持つ子どもの中には、力のコントロールを苦手とする子が少なくありません。

お友達と遊んでいて関わり合いの中で本人には悪気がないけれども強くたたいてしまう。ボール遊び等でボールを渡す際も強く投げてしまうなど日常でお友達とのトラブルに繋がることもあると思います。

運動療育を通じて、自分自身の体のコントロール方法を学び、自分自身のイメージとパワーコントロールの向上を目指していきます。

学校生活や日常生活でも運動をすることでの失敗の経験で苦手意識を持つ子もいます。

運動療育では運動を細分化(簡単→普通→難しい)することで「できた」という自己肯定感の向上を目的とする一面もあります。運動には多種多様なものがあり、勝敗にこだわるものばかりではありません。机に座って行う学習に比べると、プログラムの内容を慎重に考えれば「できない」を限りなく減らすことも可能です。

子ども自身が成功体験ができ、自信を持ち次の行動へチャレンジできる機会が増えることも運動療育は適しています。

子ども達のストレスを発散させる意味でも運動療育が取り入れられています。

運動療育で充分に体を動かしてからパワーを発散させてから学習療育を行います。運動後は脳が活性化され集中しやすい環境を整えます。着席が苦手な子に対してもできたことをすぐに褒め意欲向上や成功体験の機会を増やすことも大切です。子どもにとってできる限りストレスを減らしながら療育を行うためにも大切なプログラムです。

社会的な認知と理解の必要性

発達性協調運動障害は、他の発達障害と比べて一般的な認知度が低いことが多く、適切な支援が行き届いていない場合があります。このため、学校や保護者、地域社会全体でこの障害についての理解を深めることが必要です。教師や保護者が発達性協調運動障害に対する知識を持ち、早期に気づき、適切なサポートを提供できる体制を整えることが重要です。また、社会全体がこの障害を理解し、支援する姿勢を持つことで、子どもたちがより良い環境で成長できるようになるでしょう。

まとめ

発達性協調運動障害は、子どもの成長と発達にさまざまな影響を与える障害ですが、適切な支援と環境整備によって、子どもが自分の力を最大限に発揮できるようになる可能性があります。社会全体での理解と支援が広がることで、発達性協調運動障害を持つ子どもたちが、自己肯定感を持ちながら成長し、豊かな人生を送ることができるようになることを願っています。

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