子どもの発達を支援する上で、年齢に応じた対応は極めて重要です。発達障害を持つ子どもたちは、成長とともに必要な支援や環境が変化します。子どもの行動などで心配になることもあるかもしれませんが、発達段階を理解し対応することも重要です。それぞれの年齢段階に応じた適切な支援を提供することで、彼らが持つ可能性を最大限に引き出し、社会の中で生き生きとした生活を送れるようサポートすることができます。本コラムでは、発達障害のある子どもたちに焦点を当て、幼児期から思春期までの年齢に応じた対応方法を解説します。
幼児期(0~3歳):基礎を築く時期
幼児期は、発達障害の早期発見・早期介入が鍵となる時期です。この段階では、子どもの行動や発達の特徴を理解し、それに合わせた環境を整えることが重要です。
特徴
発達の遅れや独特な行動が目立ち始める時期
言語発達や社会性の獲得が課題となることが多い
感覚の過敏・鈍感などの感覚処理の問題が現れる場合がある
対応のポイント
環境調整: 子どもが過剰に刺激されないように、静かで整理された空間を提供します。
視覚的支援: スケジュールやルールを絵や写真で示すと、子どもが理解しやすくなります。
早期療育プログラム: 言語療法、作業療法など、専門家による支援を活用します。
親子の絆を強化: 子どもと安心して関わる時間を確保し、肯定的な関係を築くことが発達の土台となります。
発達段階として安心できる親子関係の構築
・無条件に自分を愛し保護する存在として親を信頼する
・周囲への好奇心が芽生える
・少しずつ母親から離れ他者とかかわる
・基本的生活習慣の基礎が身に付く
関わり方で大切にしたいこと
家族のふれあいを通じて、愛情に支えられた豊かな人間性・社会性の基盤を育む
0歳~1歳くらいまで、赤ちゃんの望んだことを受け入れるという気持ちで育てる
・親の温かいまなざし
・温かい言葉かけ
・スキンシップ
身の回りのことを子ども自身がやり遂げることができる実感を体得させる
・生活リズム、早寝早起き、食生活
・トイレトレーニング
・親(保護者)がお手本となる行動をする。
・父親母親など周りの大人が協力して取り組む
幼児後期(4~6歳)
発達段階として自発性の芽生え
・集団遊びができるようになり、対人関係能力や秩序感覚を身に付け始める
・善悪の判断基準が形成され始めるとともに、良心が芽生える
・対人関係が保てるようになり他者への思いやりを持つことができる
・身の回りのことが自分ででき始め、基本的な生活習慣が身に付く
関わり方で大切にしたいこと
遊びや生活の中で、ほめたり認めたりしながら、社会性の獲得を手助けする
社会性を身に付けさせるための基本的なことを伝える。
・社会のルール、家庭のルール
・善悪の基準、あいさつ、我慢、お手伝い
やる気を育てる
・親が見本を示す
・一緒にやってみる
・笑顔でほめる、認める
子供の考えを尊重し自発性を促す。
・「自分でする」習慣を身に付けさせる
・子どもの話を十分聞く
児童前期(7~9歳)
学童期は、学校生活を通じて学びの基礎を築き、友人関係を育む時期です。この時期は、発達障害による特性が学業や対人関係に大きな影響を与えることがあります。
特徴
集団行動や学校でのルールに適応することが難しい場合がある
注意欠陥・多動性障害(ADHD)や学習障害(LD)が目立つ場合も
友人関係のトラブルや孤立が起こりやすい
対応のポイント
学校との連携: 特別支援教育コーディネーターや担任と連携し、個別の教育計画(IEP)を作成します。
学習支援: 書字や計算が苦手な場合は補助ツールを導入したり、得意な方法で学ぶ機会を提供します。
ソーシャルスキルトレーニング: 他者との関わり方やコミュニケーションの練習を支援します。
自己肯定感を高める: 成功体験を増やし、「自分はできる」という感覚を育てます。
発達段階として自発性の芽生え
・集団の中で役割を決めて遊ぶことができる
・他者に共感し、我慢や分けあい、交代などができる
・善悪の判断や規範意識の基礎ができる
・身辺自立ができる
・自然や生命を慈しむことができる
関わり方で大切にしたいこと
様々は活動をとおして、知・徳・体のバランスを考える。
★積極的に運動や学習に取り組めるよう、生活リズムを整える
・早寝早起き朝ごはん
・家庭学習習慣確立のための声かけ、見届け
規範意識を育てる大切な時期であることを自覚する
・様々な体験や活動に挑戦させ、認める、褒める、方針を示す
・その時々の親の感情によって子どもへの対応を変えない
・親の行動を通じてより良いお手本を示す
・あいさつ、お手伝いなど、親子で小さな実践を積み重ねる
子ども同士のトラブルがあることも理解する。
・いつでも相談できる学校との関係づくりを心がける
・親の判断で子どもの人間関係をコントロールしない
児童後期(10~12歳):学びと社会性を広げる時期
発達段階として他者意識の芽生え
・他者との関係の中で自分のことを考えたり、他者への接し方を考えたりするようになる
・他者との関係の中で善悪の判断がつく
・自分の感情や欲求を抑えることができる
・トラブルを解決しようとすることができる
・失敗から学ぶことができる
・集団の中で自分の役割を意識し、責任を果たそうとする
・生き物の世話をする
関わり方で大切にしたいこと
一方的な欲求や叱責ではなく、子どもとの対話を大切にして、
子どもが他者との関係の中で自分の存在を認められるように支援する
子どもと仲間との成長を理解する。
・子どもの人間関係を把握する
・金銭や物を与え過ぎない
・地域行事や体験活動に、子どもとともに積極的に参加する
・子どもが失敗したり悩んだりしている時には、良き相談相手となる
思春期(13~18歳):自己の確立と将来の準備
思春期は、自己のアイデンティティを確立し、社会的自立に向けて準備を進める重要な時期です。しかし、発達障害のある子どもにとっては、この時期に不安や葛藤が増すこともあります。
特徴
自己理解や自己主張が難しくなる場合がある
二次障害(不安、うつ症状など)が現れることも
将来の進路や職業についての悩みが増える
対応のポイント
カウンセリングの活用: 思春期の心理的変化に対応し、子どもが抱える悩みを共有できる場を提供します。
将来を見据えた支援: 職業訓練やインターンシップなど、実践的な体験を通じて職業観を育てます。
自己理解の促進: 自分の特性や得意・不得意を理解することで、将来の選択肢を広げます。
家族との対話: 子どもの希望や思いを尊重し、将来について一緒に考える時間を持つことが大切です。
子どもの認めてもらいたいという気持ちを理解する。
・家族の一員としての役割を持たせることで「自分は家族の中でなくてはならない大切な存在である」と感じさせる
・学習やお手伝いなどさまざまな経験を積ませることで「自分は自分なりにやっていける力がある」と感じさせる
子どもの年齢に応じた対応を考える上で大切なのは、「その子にとって今必要なことは何か」を見極めることです。一人ひとり異なる特性を持つ発達障害の子どもたちに寄り添い、柔軟かつ適切な支援を行うことで、彼らが安心して成長できる環境を整えることができます。
社会全体で子どもの成長を支える体制を強化し、彼らが輝く未来を築けるよう取り組んでいきましょう。
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