「感覚統合」と子どもの発達について

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「感覚統合」と子どもの発達

「感覚統合」とはアメリカの作業療法士であるエアーズが考案した療法で、「脳に入ってくるさまざまな感覚情報を目的によって整理し、秩序だったものに構成すること」です。
子どもの発達において「適切な感覚情報」は脳機能の発達に深く関係しており、非常に重要な働きをしています。発達障害を抱える人は、脳内での情報の連動がスムーズにいかないために特有の行動が発生していると考えられています。そのため、適切な発達を促すことが大切です。

今回はその「感覚統合」について解説していきます。

感覚統合とは?

感覚は生活を営む上で重要な器官です。人間の感覚にはよく知られている五感(視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚)の他にも様々な器官が存在しています。
一つ目は固有感覚と呼ばれるもので、筋肉や関節の動きを感知する働きをしています。自分の手足や体の関節がどの程度曲がっているのか、伸びているのか、またどのくらい筋肉に張りが生じているかを知覚し、力の加減をすることができるようになります。例えば、荷物を持つために腕に力を入れ重さを感じ取れたり、階段を昇れたりするのも固有受容覚の働きによります。
二つ目は前庭感覚というバランスを取るための感覚です。耳の奥の三半規管で感じ取り、体の様々な器官と連動をしています。それにより、転ばないで歩いたり、座席のうえで姿勢を保ったりすることができます。また、前庭感覚は自律神経とも関係しており、血圧や発汗の調整等を行い、気分をスッキリさえた状態に保持しようとする働きもしています。情緒の安定にも関係してくるので、前庭感覚の発達は、対人関係上の課題を解決していくためにも重要なポイントとなってきます。
感覚統合の視点で大切にしたいのは、先ほど説明した「固有感覚」「前庭感覚」の他に「触覚」も加わってきます。触覚は触り心地を判断する感覚です。お母さんの体内にいるときから最も早く発達する感覚の一つで、快と不快を判断するために使われます。触って気持ちのいいものは安全、触って気持ちが悪い、痛いものは危険ということを学習していきます。多くのケースで赤ちゃんは、保護者とスキンシップを取る中で「保護者=安全な存在」と学習して、愛着を形成していきます。愛着の形成は、共感性の発達に大きく関係しています。触覚の発達も、前庭感覚と同様に対人関係・コミュニケーションの発達において大切な働きになるのです。

様々な感覚を同時に感じ取り、脳内で処理し、活動することで人間は新しい行動を獲得していきます。人間すべての発達の土台は「感覚」であり、この感覚のつまずきにアプローチして発達を促すことによって、より高度な動作の改善につなげていくのが感覚統合なのです。

感覚の発達につまずきがあると?

乳幼児期において、感覚が発達途中の状態で自分の足りない感覚を補おうと無意識に行動することがあります。そのことを「自己刺激行動」といい、発達段階上どの子に見られる現象で、「常に走って移動する」「高いところから飛び降りる」等の行動が現れたりします。一方で、発達の遅れや偏りがあったり、感覚が育ちにくい体質の場合、ほかの子よりも強く体に刺激を入れようとします。
例えば、固有感覚が未発達の場合
・机や椅子の上に乗ってしまい、飛び降りる
・階段から飛び降りる
・移動時に走ってしまう
・椅子に座るとき過度にもたれかかり、偏った姿勢で座る

などの行動が現れます。また、前庭感覚が未発達であると
・両手を広げてくるくるする
・椅子を傾けて1本足の状態にする
・授業中に離席し、飛んだり跳ねたり動き回る

などの自己刺激行動が見られます。自己刺激行動は発達段階においてその子に必要な行動です。しかし飛び降りなどの危険な行動の場合は、安全な環境で感覚が育てられるように別の刺激で補うようにしていく必要があります。

発達を促すには?

感覚統合の視点で大切にしたい「固有感覚」「前庭感覚」「触覚」の発達を促す活動を紹介します。


◆固有感覚へのアプローチの例
・動物歩き
  動物の動きを真似てしゃがんだり、四つん這いになったり、ジャンプしたりし、体の様々な部位を動かし動作イメージをつかめるように促す
・手先を使った活動
  ひも通しや箸つかみ等、微細運動を取り入れることによって目と手の協応を促す

◆前庭感覚へのアプローチの例
・トランポリン
  上下の揺れの刺激を入れることで、バランスが崩れないよう調節する力を育てる
・マット運動
  でんぐり返し等で回転の刺激を入れ、平行感覚の発達を促す

◆触覚へのアプローチの例
・小麦粉粘土や泥遊び
  様々な感触の素材を触ることで、触覚を使う経験を積む
・スキンシップ遊び
  体をなでたりマッサージをしたり色々な刺激を入れていき、やりとりの楽しさを味わえるようにする。

まとめ

感覚の発達のつまずきに気づくためには、日々の子どもの行動をよく観察し、理解していくことが重要です。早期に専門家の力を借りることによって、その後の発達に大きく関係してきます。
お子様の発達について、心配に感じることがあればぜひ専門機関にご相談してみてください。

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